今年の春は百日咳が流行しています。咳が長引き、自分が百日咳ではないか?ほかの人に百日咳を移してしまうのではないか?と心配になる方もいるかと思います。ここでは、百日咳がどのような病気か、またどのような症状か、治療方法についても解説したいと思います。
<百日咳とは?>
百日咳はBordetella pertussis(ボルデテラ・パータシス)という細菌によって引き起こされる感染症です。長期間にわたり咳が続くことがあります。
-
全年齢で発症しますが、乳児やワクチン未接種者、免疫低下者で重症化しやすいと言われています。
-
成人では軽症または非典型的症状で見逃されることも多く、乳児への感染源となることがあります。
-
近年、ワクチン効果の減衰により、ワクチン接種済みの思春期や成人でも再感染が増加傾向です。
< 症状の経過>
① カタル期(1〜2週)
-
軽い咳や発熱などの風邪様症状。
-
この時期は最も感染性が高いが、診断は困難。
② 痙咳期(2〜6週)
-
特徴的な連続性の咳嗽発作(10回以上連続して咳き込む)、おえっとなる嘔吐を伴う咳。
-
咳の後に吸気性の笛様音(whoop)が聞かれることがある(特に乳児や小児)。
③ 回復期(数週間〜数ヶ月)
-
咳の頻度・強度が次第に減少。
<検査・診断方法>
① 鼻咽頭スワブでのPCR法
② 細菌培養(時間がかかり感度も低め)
③ 抗体検査(急性期と回復期での抗体価の変化)
当院では③の抗体検査を実施しています。
< 治療 >
① 抗菌薬投与(早期が効果的)
-
マクロライド系(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン)
→ 特にカタル期〜痙咳初期に投与することで感染期間短縮・重症化予防に有効です。
② 対症療法
-
咳止め内服薬(デキストロメトルファン、リン酸コデインなど)を使用。
-
重症例(特に乳児)では入院、酸素、無呼吸対応が必要。
<感染対策>
-
咳が出始めてから5日間の抗菌薬投与終了までは登校・出勤停止(学校保健安全法)。
-
医療機関では標準予防策+飛沫予防策を徹底。
<院長からのメッセージ>
-
成人の長引く咳(2-3週以上)は、百日咳の可能性もありますが、診断が難しい病気でもあります。
-
ワクチン効果は時間とともに減弱する(一般的に、免疫効果は4〜12年で減少すると言われています)ため、免疫のギャップ世代(10〜30代)では発症に注意が必要です。
<参考資料>
国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/pertussis-m/pertussis-iasrtpc/7075-444t.html
厚生労働省 百日咳
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/whooping_cough.html