胃腸炎

胃腸炎胃腸炎(胃腸かぜ)は、主にウイルスが胃や腸に感染して、下痢・吐き気・嘔吐・腹痛などを起こす状態です。ノロウイルスやロタウイルスなどが原因となることが多く、冬場に多く発生します。よく患者様から原因はどのウイルスか聞かれますが、実はどのウイルスに感染しているかは重要ではなく、脱水になっているかが重要なポイントです。ウイルスに対する特効薬はないため、基本的には水分補給をして経過を見ることになります。場合によっては吐き気どめや下痢止め、点滴による水分補充を使用することもあります。





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原因となるウイルスとその特徴

ノロウイルス

ノロウイルスは感染力が非常に強く、ごく少量でも感染します。冬に多く発生します。
感染経路には、

  1. 感染した人の吐物や便に触れた手を介して感染する
  2. 乾燥した吐物や便が空中に浮遊し吸い込んで感染する
  3. ノロウイルスのいるカキやシジミを摂取して感染する

などがあります。自然に治るケースがほとんどですが、乳幼児や高齢者では脱水になることがあるので、注意が必要です。

ロタウイルス

発熱した子供ロタウイルスは、子供に多い胃腸炎の原因ウイルスで、冬から春にかけて流行します。症状は、発熱や嘔吐ではじまり、水のような下痢を繰り返します。子供がロタウイルスに感染した場合、1/2〜1/3の確率で大人の家族に感染すると言われています。有効な抗ウイルス薬はないため、水分を取って安静にして経過を見ます。嘔吐が強い場合は点滴や吐き気止めを使用します。

主に症状で診断を行います。どのウイルスに感染しているかを調べる検査はありますが、結果によって治療方法が変わらないのであまり行いません。

胃腸炎の治療は水分補給が基本

胃腸炎の時の水分補給

ウイルス性胃腸炎の場合は、1〜3日程度で症状が改善してくることが多いため、水分がある程度取れていれば点滴を行わず経過を見ます。原因ウイルスによって治療方法は変わりませんし、ウイルスを直接たたくような特効薬はありません。水分摂取があまりできず、脱水がある場合は、点滴による水分補充を行います。吐き気が強い場合は、吐き気止めの内服薬や座薬を使用することもあります。下痢はウイルスを体の外に排出しようとする体の防御本能でもあるので、下痢止めはあまり積極的には使用しませんが、1日に何度も下痢が出て困る場合は使用することもあります。
水分補給は、OS-1などの経口補水液が良いでしょう。下痢や嘔吐のある場合は、ナトリウムやカリウムなどの電解質が体から多く失われていますので、これらが多く含まれる経口補水液を使用します。ポカリスエットなどのスポーツドリンクは、OS-1などよりも電解質が少なく糖分が多いので、運動後の水分を補充には適していますが、胃腸炎の際にはOS-1などの経口補水液の方が適しています。また乳幼児では、体重1kgあたり100mlを目安に水分補充を行いましょう。例えば体重15kgの場合は、一日1500mlを与えます。これには母乳やミルクも含まれます。こまめに摂取するように心がけましょう。

胃腸炎の時の食事は?

おかゆ吐き気や嘔吐がおさまってきたら少量から食事を始めますが、胃腸の機能が落ちているため以下の点に注意して食事をすると良いでしょう。

  1. 消化の良いものを食べましょう。
  2. 辛いもの、塩分の多いものは控えましょう。
  3. 冷たいものは控えましょう。
  4. よく噛んで食べましょう。

おかゆ、うどん、りんご、バナナなどは消化もよく栄養価も高いのでおすすめです。
乳幼児では、おかゆやリンゴのすりおろし、野菜の煮潰しなどが良いでしょう。

いつから学校や会社に行って良いのか?

いつから学校や会社に行って良いのか?熱が下がっており、下痢や嘔吐の胃腸炎症状が改善していれば、登校や職場復帰は可能です。 法的な定めは特にありません。ただし、下痢の症状が改善しても、1週~1ヶ月間は便の中にウイルスが存在すると言われており、トイレの後の手洗いは十分に行うことを心がけて下さい。

危険な腹痛のサイン

危険な腹痛のサイン

以上のような症状がある場合は、細菌性胃腸炎・食中毒や盲腸(虫垂炎)などの可能性があり、病院に受診して検査や治療を受けないと良くなりません。以下の細菌性胃腸炎や盲腸の特徴を説明します。

ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎

胃腸炎の中でも、細菌による胃腸炎はウイルス性胃腸炎よりも症状が激しく、放置すると脱水症状を起こしたり細菌が全身に回ってしまいます。激しい嘔吐、強い腹痛、血便、高熱が出るなどの症状がある場合は、細菌による胃腸炎を疑います。食中毒が原因となることもあり、夏場に多く発生します。原因菌には、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などがあります。
腹痛が強く下痢がない場合は、胃腸炎以外の病気を考える必要があります。特に盲腸(虫垂炎)は初期には症状も軽いケースもあるため注意が必要です。下記のように、初期にはみぞおちに痛みがあって右下腹部に移動していく場合や嘔気・嘔吐を伴う場合は盲腸の可能性があります。盲腸の部位は、おへそと右骨盤の出っ張っている部分を結んで右から1/3のところにあるので、ここを押して痛い場合は盲腸の可能性が高くなります。
他にも胆嚢炎や憩室炎、虚血性腸炎など腹痛を起こす病気があります。盲腸やこれらの病気を疑った場合、腹部CT検査で診断をつけることができます。

まとめ

  • 多くの胃腸炎は、水分補給で1-3日程度で自然に改善します。
  • 水分摂取はこまめに行い、経口補水液などを活用しましょう。
  • 吐き気・嘔吐がおさまってきたら、消化の良いものから摂取しましょう。
  • 細菌性胃腸炎では、腹痛などの症状が強く、抗生剤の投与が必要になります。
  • 危険な腹痛のサイン(嘔吐が激しい、血便、高熱など)に注意しましょう。

嘔吐・腹痛・下痢などの症状でも、一部は胃腸炎ではない可能性もあり、血液検査や腹部CT検査などが必要になることもあります。危険な腹痛のサインに当てはまる場合は、一度病院に受診し医師の診察を受けましょう。

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