新型コロナウイルス感染症後の咳

新型コロナウイルス感染症後の咳新型コロナウイルスに感染すると、まず発熱・倦怠感・頭痛、咳などの症状がでます。感染した後に、熱や倦怠感などの症状はおさまっても咳だけが残り長引くことがあり「いつまでこの咳は様子を見て良いのだろうか?」とお困りの方も多いと思います。
一般に感染後に3週間以上咳が続く場合は、病院を受診した方が良いと考えられています。新型コロナウイルス感染症の後遺症で咳が長引くことがあり、日本人のデータでは感染3ヶ月後に約20%程度の方に咳が残り、1年後でも5%程度の方に咳が残ると報告されています。また新型コロナウイルス感染をきっかけに咳喘息や肺気腫などの他の病気の症状がはっきりしてくる場合もあります。そのため長引く咳の原因が、新型コロナウイルス感染症の後遺症なのか、他の原因なのかをまずは調べることが必要です。
ここでは、コロナウイルス感染後の咳の原因やその特徴や対処法について説明したいと思います。

以下のような症状に当てはまる方は参考にしてください。

新型コロナウイルス感染の後から…
  • 咳が長引く
  • 会話中や仕事中に咳が出て困る
  • 夜間咳で眠ることができない
  • 日中急に咳き込む

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新型コロナウイルス
感染症後の咳の原因

新型コロナウイルス感染症後の咳

新型コロナウイルス感染症後の咳の原因としては、後遺症以外の原因も意外に多いと考えられています。コロナウイルスへの感染をきっかけに、気管支喘息や咳喘息、アトピー咳嗽などの病気の症状が出てきている場合も多く見うけられます。このような場合は、肺機能検査や気道過敏性試験などを実施して診断・適切な治療を行えば咳症状が改善します。
また感染による咳をきっかけに、胃酸の逆流が増加し、逆流性食道炎が悪化、咳がさらに増えるといった悪循環が見られるケースもあります。

まずは問診や検査を行ってこれらの病気の可能性がないかを判断します。
新型コロナウイルス感染後の長引く咳の原因として考えられるものとしては以下があります。

  • 新型コロナウイルス感染症後の後遺症
  • 感染をきっかけに気管支喘息・咳喘息が顕在化したもの
  • 感染をきっかけにアトピー咳嗽が顕在化したもの
  • 逆流性食道炎が悪化したもの
  • 感冒後咳嗽(がいそう)
  • そのほかの病気:COPD、気管支拡張症

新型コロナウイルス感染症後の咳の原因

新型コロナウイルス感染症の後遺症が原因でない咳

ここではそれぞれの病気の特徴について説明します。

気管支喘息・咳喘息

気管支喘息や咳喘息は、感染症をきっかけに症状がはっきりしてくることはしばしばあります。気管支喘息では、アレルギーによって気管支に炎症が起こり、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)症状や咳が出るのが特徴です。一方、咳喘息では喘鳴は起こらず、咳のみが続きます。
喘鳴や咳の症状は、夜間や朝方に強く、会話中や寒暖差のある時にもでます。吸入薬(吸入ステロイドや吸入気管支拡張薬)で症状が改善するのが特徴です。

アトピー咳嗽(咳嗽)

アトピー咳嗽は、咳の症状と喉のイガイガした感じやかゆいような感覚があるのが特徴です。季節の変わり目で悪化するのは咳喘息と同様ですが、冷気・会話や受動喫煙などをきっかけに誘発されることもあります。
肺機能検査や呼気一酸化窒素濃度を測定しても正常のことが多く、検査で異常がありません。抗ヒスタミン薬が効果があることが多く、治療により咳が改善します。

逆流性食道炎

胃酸が逆流し気管支やのどを刺激することで咳が出ます。感染をきっかけに咳が出ることで、さらに胃酸の逆流が増加し咳を悪化させます。このような悪循環が続くため、適切な治療がされないと咳がなかなか改善しません。胸焼けた酸っぱいものが上がってくる感覚があり、食後や就寝前に咳が悪化します。
また、逆流性食道炎では、会話や発声で咳が悪化する頻度が高いことが知られています。治療は、胃薬(プロトンポンプ阻害薬)が効果があります。

逆流性食道炎

新型コロナウイルス感染の後遺症による咳

新型コロナウイルス感染の後遺症による咳

後遺症の咳の診断には、喘息やアトピー咳嗽などの他の病気の除外が重要です。必要な検査を行っても原因がはっきりせず、胸部C Tなどで異常な影が残っている場合、後遺症の可能性を考えます。
新型コロナウイルス肺炎後には、3ヶ月の胸部CT でも約半数に何らかの異常な影が残っており、肺機能検査でも38%程度に肺機能低下が見られると報告されています。コロナウイルス肺炎後に、線維化という肺が硬くなる変化が10−20%程度で見られることがあり、このような場合には咳反射の感受性が高まり咳が続きます。コロナウイルスの後遺症が強く残ると、呼吸機能障害によって息切れが出ることがあります。
その他にも新型コロナウイルス肺炎後に、器質化肺炎という別のタイプの肺炎を併発することが報告されています。器質化肺炎を起こした場合、咳の他にも発熱などの症状が続きます。このような場合は、ステロイド薬が効果があることがわかっています。

咳の感受性が亢進

咳の感受性が亢進

新型コロナウイルス感染症後の長引く咳の原因として、もう一つ重要な考え方として「咳の感受性が亢進」していることが考えられます。コロナウイルスによって咳の神経(迷走神経)が障害され、咳の感受性が亢進することで気管支表面が過敏状態になり会話中や寒暖差などのちょっとした刺激で咳が出てしまいます(PLoS One. 2023 Mar 30; 18: e0283758.)。
咳の感受性を抑えるには、吸入薬や気管支表面にあるスイッチを押さえる薬、神経の障害を改善させる薬などを使用することがあります。当院では、コロナ後の咳で悩む患者様が多く来院され、このような治療を積極的に行っています。コロナ後の咳は、通常の咳止めで経過を見ていても咳の感受性が改善しないため、咳が良くなってこないケースが多く見受けられますので、一度当院にご相談ください。

検査

肺機能検査

肺機能検査は、息を吸ったり吐いたりして、肺の機能を調べる検査です。「安静時呼吸」と「努力時呼吸」をみる検査を行います。主に評価する項目は以下の3点です。

  • 努力性肺活量:最大に吸うことができる空気の量で、肺の柔らかさを見る
  • 1秒量:一秒間に吐き出すことのできる空気の量で、気管支の閉塞の程度を見る
  • 1秒率:1秒量/努力性肺活量のことで、気管支の閉塞の有無を見る

新型コロナウイルス感染症後には、線維化といって肺が硬くなる変化が起こることがあり、肺活量が低下します。一方気管支喘息では、炎症により気管支がせまくなるため1秒率1秒量が低下します。

肺機能検査

胸部CT検査

胸部CT検査

胸部CT検査で、新型コロナウイルス感染症の後に見られる異常な影としては、すりガラス影や網状影があります。これらの異常は、胸部レントゲンでは見つかりにくいこともしばしばあるため、胸部CTを撮影してはじめて見つかるケースもあります。線維化といい、肺が硬くなるような変化が起こっていると考えられています。
気管支喘息や咳喘息・アトピー咳嗽、逆流性食道炎では、胸部CTではこのような異常は見られません。

コロナウイルス
感染症後の咳への対処方法

気管支喘息や咳喘息が原因と考えられる場合は、吸入ステロイドや吸入気管支拡張薬で咳の多くは改善します。アトピー咳嗽や喉頭アレルギーでは、抗ヒスタミン薬などのアレルギー薬で咳症状が改善します。逆流性食道炎による咳では、胃薬(プロトンポンプ阻害薬)で咳や胸焼け症状が改善します。

新型コロナウイルス感染症の後遺症による咳に対しては、咳の感受性を改善させることが重要と考えています。吸入薬を使用したり、リフヌアという難治性の咳に対して使用される薬を処方することがあります。器質化肺炎を合併している場合には、ステロイド薬を使用することもあります。

院長からのメッセージ

診察新型コロナウイルス感染症後に咳が長引いてお困りの方は多くいます。せっかく新型コロナウイルスから改善し、会社に出社したり学校に登校できるようになっても、咳が続いていると周囲の目が気になったり、いつまで咳が続くのか不安になります。
当院では、そのような患者様にできる限り早く咳が治るように呼吸器内科専門医として最善の策を考えます。
また、必要に応じて肺機能検査や胸部C T検査により精査を行います。
新型コロナウイルス感染症後に咳が続いて心配、不安な方は一度来院ください。

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