長引く咳

長引く咳激しく長く続く咳は、夜も眠れないことがあり大変つらい症状です。
特にコロナ禍では、コロナウイルスに感染していなくても咳が続くと、他人の目が気になる症状となってきています。

このページでは、下記のような症状の方に、その原因や対処方法について説明します。

  • 咳が長引いている
  • 咳が止まらない
  • 会話中に咳が出て困る
  • 頑固な咳
  • 咳で夜が眠れない
  • かぜの後に咳が残る

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原因

咳はさまざまな原因で起こります。肺や気管支だけではなく、のどや鼻、食道や心臓が原因のこともあります。
これは咳のセンサーが、色々な臓器に存在しているためです。そのため咳の原因を調べるには、さまざまなことを問診し、検査する必要が出てきます。

咳の持続期間と原因

  急性咳嗽 遷延性咳嗽 慢性咳嗽
持続期間 3週間以内 3-8週間 8週間以上
頻度が多い原因 ウイルス感染症(風邪)
肺炎
アレルギー性鼻炎
気管支喘息
咳喘息
逆流性食道炎
肺気腫(COPD)
アトピー咳嗽
上気道咳嗽症候群
感染後咳嗽
後鼻漏
百日咳
薬剤性
まれだけど重要な原因 急性間質性肺炎
心不全
肺結核
間質性肺炎
肺がん

原因を考える上で重要なのが咳の持続期間です。
咳は大きくわけると、咳が出始めてから3週間以内の急性咳嗽(”がいそう”と読みます)と、3-8週間続く場合の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽があります。それぞれによって原因や治療方法が変わってきます。

急性咳嗽の原因の多くは、ウイルスなどの感染症(73-91%)、いわゆる風邪が原因となります。その他にも肺炎や急性間質性肺炎などの疾患が隠れている場合があります。高熱(>37.8度)が5日以上長引いたり、呼吸や脈が速い場合は肺炎になっている可能性があり要注意です。また肺炎の場合は、痰を伴っていることが多く、黄色の痰や鉄さび色の痰が出ることがあります。

咳の原因

3 週間以上咳が続く場合(遷延性咳嗽や慢性咳嗽)の原因は、感染症でないことが多く、喘息・咳喘息・肺気腫や逆流性食道炎などの可能性があります。また肺がん、肺結核、間質性肺炎などの重篤な疾患が隠れている場合もあるため、しばしば胸部レントゲン検査や肺機能検査などの検査が必要になります。

気管支喘息・咳喘息

のどが原因の咳

主にアレルギーによる気道の炎症が原因です。喘息では喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)といった症状が出ますが、咳喘息では咳のみが続きます。基本的には、咳や喘鳴は朝や夜に強いといった特徴があります。また季節の変わり目や風邪をひいた時、タバコの煙、寒暖差、会話、運動などをきっかけに咳が悪化することがあります。他のアトピー素因(アレルギー体質)があり、アトピー性皮膚炎・花粉症などの病気などの病気を併せて持っていることがあります。一般的な咳止めはほとんど効果がなく、吸入薬(吸入ステロイド・気管支拡張薬)がよく効いて咳が良くなります。詳しくはこちらを参考ください。

肺気腫(COPD)

タバコなどの有害物質を吸入することにより肺や気管支に炎症を起こす病気です。長く続く咳に加え、痰や息切れといった症状があります。特に風邪などの感染症をきっかけに症状が悪化し、咳が顕著になり長くびくことがよくあります。喘息と同じように喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)が出ることがありますが、COPDでは喘息の方に比べて喫煙歴が長い、ご高齢の方が多い、痰がよく絡む傾向があります。治療は、気管支拡張薬の吸入や去痰剤を使用します。詳しくはこちらを参考ください。

肺気腫(COPD)

逆流性食道炎

逆流性食道炎

胃酸が逆流することで、気管支や喉を刺激することで咳がでます。食後や横になると咳が悪化するといった特徴があります。また胸焼けやゲップと共に酸っぱい液体が上がってくるような症状があります。長引くせきの原因のうちの5-8%程度が、逆流性食道炎が原因であると言われています。重要なのは、気管支喘息やCOPDなどの病気と併存して、咳により胃酸の逆流が悪化し、さらに咳が悪化するという悪循環に陥ることがあります。治療としては、胃酸の分泌をおさえる薬剤を使用します。時には、胃や食道の食べ物を送り出す運動を活発化させる薬剤、食道・胃の粘膜を保護する薬剤などをあわせて使用することもあります。

逆流性食道炎

感冒後咳嗽(がいそう)

感冒後がいそう

風邪や細菌感染症の後に、乾いた咳が長引くことが主な症状です。感染症により気道が敏感になることで咳が続きます。夜間や朝に咳が多いと言われています。通常は自然に良くなってくることが多いため、治療は基本的には咳止めで様子を見ます。抗生物質や抗アレルギー薬は効果がありません。水を飲んだり飴玉を舐めたりすることで喉を潤わせることで症状が軽減することがあります。

上気道咳嗽症候群(後鼻漏)

上気道咳嗽(がいそう)症候群

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などにより過剰に分泌された鼻水が喉まで流れ落ちてくることで咳が誘発されます。咳の多くは繰り返される咳払いで、「鼻の奥に何か流れる感じ」として自覚されることもあります。咳の原因の17-34%程度が後鼻漏によるものと言われています。治療は原因により異なります。アレルギー性鼻炎が原因の場合は抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬を、副鼻腔炎が原因の場合は抗生物質などを処方します。

肺結核

結核菌に感染することにより咳が誘発されます。咳は痰をともなっていることが多く、病気の進行とともに徐々に悪化していきます。長く続く微熱や体重減少・寝汗を伴うことがあります。肺結核は抵抗力の落ちた方に感染することが多く、高齢者や免疫抑制剤を内服している方では注意が必要です。また他の人に病気がうつる可能性があるので、早期に診断し治療する必要があります。詳しくはこちらを参考ください。

肺結核

間質性肺炎

肺が硬くなっていく病気で、多くの患者さんが頑固な咳症状を伴います。咳は乾いた咳が続くことが多く、1日を通して咳が出ます。病気が進行すると、息切れなどの症状が出てきます。胸部レントゲンやCT検査で、すりガラス影などの異常な影が見られます。詳しくはこちらを参考ください。

間質性肺炎

病院を受診したほうがよい咳の特徴

長引く咳のポイント

長引く咳のポイント

長引く咳のポイント

病気によって咳の出やすい時間帯や咳の特徴があります。例えば喘息では夜から朝にかけて咳が最も強くなります。咳以外の症状も重要となってきます。のどのイガイガは、アトピー咳嗽を示唆しますし、胸焼けは逆流性食道炎を疑います。また重篤な疾患のサインがある場合は要注意で、血痰や呼吸困難がある場合は、すぐに病院を受診した方が良いでしょう。 その他長引く咳でも必ず病院を受診した方が良いのは、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)がある、微熱が続く・体重減少があるなどのケースです。

咳の原因は一つではない

咳の原因は一つではないもう一つ重要なポイントとして、咳の原因は一つでないことも多く、いくつかの病気を同時に治療することがあります。例えば、気管支喘息や咳喘息に逆流性食道炎はよく合併します。アレルギー性鼻炎による後鼻漏も、喘息やアトピー咳嗽でしばしば見られます。
これらの病気が複雑に絡み合っていることがあり、検査を行ってもなかなか病気を一つに絞りきれないこともあります。そのため、治療は複数の薬を組み合わせて治療を行うこともしばしばあります。

咳の原因診断

咳の原因を特定するには問診が重要になります。咳が出始めたきっかけ、持続期間、季節性や日内変動の有無、鼻水・喀痰・呼吸困難の有無、咳が食事や体勢に影響されるか、喫煙歴、アレルギー歴などを詳しくお聞きします。例えば、喘息では咳の症状が夜間~早朝に悪化するといった症状の日内変動がよく見られます。

長引く咳に対する問診

  • 咳のきっかけは何でしたか?
  • 咳はどのくらい続いていますか?
  • 今までに咳が長引いて困ったことはありますか?
  • 咳のひどい時間帯はいつですか?
  • 季節の変わり目で悪化することはありますか?
  • 痰はからみますか?
  • アレルギーの既往はありますか?
  • 家族の方で喘息の方はいますか?
  • 咳の悪化する誘因はありますか?(喫煙・食事・寒暖)
  • 胸焼けやげっぷ、酸っぱいものが上がる感じはありますか?
  • 鼻水がのどの奥に垂れ込む感じはありますか?
  • 過去にアレルギー検査を行ったことはありますか?
  • 過去に吸入薬で咳が良くなったことはありますか?
  • 息切れはありますか?
  • 常用薬はありますか?

咳の原因を調べる検査

以下は、咳の原因と特定するためによく行われる代表的な検査です。

肺機能検査 気管支喘息や肺気腫、間質性肺炎などでは異常が見られます。
モストグラフ検査 気道抵抗を測定します。喘息や肺気腫では気道の抵抗が上がります。
呼気NO(一酸化窒素)検査 気道の炎症を調べます。気管支喘息や咳喘息で高い値になります。
胸部レントゲン・CT 肺癌・肺結核・間質性肺炎などの疾患では異常な所見がみられます。
血液検査 白血球や好酸球、IgEの値を見ることで炎症やアレルギーがあるか調べます。
喀痰検査 一般細菌に加え、結核菌の有無をチェックします。
咳喘息やアトピー咳嗽では喀痰好酸球数が増加していることがあります。

☆おもて内科・呼吸器内科クリニックでは、上記のすべての検査を行うことができます。

咳の治療

咳の治療咳の治療で最も重要なのは原因をしっかり調べることです。原因が多岐にわたり、また原因によって治療方法が大きく異なるからです。 急性咳嗽の多く感染症であることが多いので、そのほとんど(約8割)は3週間以内に改善します。そのため、咳止めで様子を見ることが多くなります。
肺炎と診断した場合は、軽症の場合は抗生物質で治療を行います。マイコプラズマ感染症を疑う場合も、マクロライド系の抗生物質を併せて処方します。
遷延性咳嗽や慢性咳嗽では、原因によって治療を決定します。気管支喘息や咳喘息では、吸入薬(吸入ステロイドや吸入気管支拡張剤)で主に治療します。逆流性食道炎では、胃酸を抑える薬が効果を発揮します。

咳の原因と治療方法

咳の原因 代表的治療
喘息・咳喘息 吸入ステロイド・吸入気管支拡張薬
COPD 吸入気管支拡張薬・禁煙
逆流性食道炎 胃薬(プロトンポンプ阻害薬)
感冒後がいそう 咳止め(鎮咳薬)
気管支炎、肺炎 抗生物質
肺結核 抗結核薬

残念ながら、遷延性咳嗽や慢性咳嗽では問診や検査で原因が特定できない場合もしばしばあります。そのような場合、診断と治療を兼ねて薬を処方して治療効果を見ることがあります。例えば、咳喘息やアトピー咳嗽では吸入ステロイド・気管支拡張薬を処方し、薬への効果・反応を見て診断し、そのまま治療継続することがあります。このような治療方法を診断的治療といい、病気によっては有効な場合があります。

咳止め薬の種類

商品名 分類 効果 副作用
メジコン 非麻薬性 + まれ
(眠気、頭痛、めまい、悪心、など)
フスタゾール +
レスプレン +
麦門冬湯 漢方 + まれ
(食欲不思、胃部不快感、など)
小青竜湯 + まれ
(発疹、発赤、など)
リコ酸コデイン 麻薬性 ++ 少ない
(便秘、悪心、あくび、など)
リフヌア 選択的P2X3
受容体拮抗薬
+++ 多い
(味覚障害、吐気、口渇、など)
※当院処方薬を中心に記載(効果等につき筆者の主観を含む)
 

咳止めはたくさんの種類が存在しますが、ここでは病気個別の治療薬(吸入薬や気管支拡張薬)を除いた一般的な咳止め薬について説明したいと思います。咳止め薬の多くは、脳の咳中枢に作用し咳症状を緩和します。メジコン(デキストロメトルファン)・フスタゾール・レスプレン(エプラジノン)などは代表的な咳止め薬で、副作用も少ないことから最も多く処方されています。

上記の咳止めで効果がない場合や咳がひどく日常生活に支障をきたす場合、麻薬性の咳止めを使います。「麻薬」と聞いてびっくりするかもしれませんが、咳止めとして麻薬を用いる場合、極端に量を減らして使うので麻薬の副作用が出ることはほとんどありません。たまにみられる副作用は、便秘や軽度の眠気ぐらいです。麻薬性の咳止めとしては、リン酸コデインやフスコデなどがあります。
最近ではリフヌアといった別の機序で効果を発揮する薬が開発され、高い咳止め効果があります。現在は、難治性の長引く咳に対してのみ治療適応となっています。問題点としては、味覚障害などの副作用が見られることや薬価が高い(他の咳止めの約10倍程度)ことなどがあります。

院長からのメッセージ

咳の原因は、多岐に渡り特定することが難しいケースがしばしばあります。また原因が一つではないことも多々あります。早めに呼吸器内科専門医に受診することで、しっかりと原因を調べ適切な治療を行うことが重要です。
当院では咳の原因を調べることができる肺機能検査やレントゲン・CTなどの検査機器が充実していますので、咳がなかなか治らなくてお困りの際にはお気軽に受診ください。


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