逆流性食道炎

逆流性食道炎逆流性食道炎は、長引く咳の原因となることがあります。その理由として、胃酸が逆流し気管支やのどを刺激することで咳を引き起こすと考えられています。通常は胸焼けやのどのヒリヒリした感じ、胃もたれなどの症状があります。ここでは逆流性食道炎という病気を、咳という症状から見た場合の特徴や対処方法について説明します。







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逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎による咳のメカニズム

逆流性食道炎は、胃酸が逆流してきて食道に炎症を起こす病気で、胸焼け・みぞおちの痛み・酸っぱいものが上がってくるなどといった症状があります。咳を引き起こす原因として考えられているのが、胃酸が気管支やのどを直接刺激し炎症を引き起こすというメカニズムです。もう一つの原因としては、逆流した胃酸が食道下部の迷走神経を刺激し、反射性に気道にある迷走神経を刺激して咳が発生するというメカニズムが知られています。

逆流性食道炎を起こす原因としては、胃と食道の境目にある噴門(ふんもん)という箇所が緩んでしまうことが考えられており、肥満や食べ過ぎ・早食い、加齢による変化、食道裂孔ヘルニアなどが引き金になります。

逆流性食道炎では、会話や発声で咳が悪化する頻度が高いことが知られています。過去の研究では逆流性食道炎の患者さんの90%が、声を出した時に咳が悪化することを自覚されたと報告されています。これは、横隔膜が噴門の締まり具合に重要な役割をしており、会話中に声を出すことで横隔膜が動いて噴門が緩み逆流が悪化することが原因と言われています。その他にも、逆流性食道炎では、横になると咳が悪化するといった症状が見られることがあります。

逆流性食道炎には様々な呼吸器病を合併する

逆流性食道炎には様々な呼吸器病を合併する逆流性食道炎による咳は、他の呼吸器病を合併していることが多々あります。そのため様々な要因で咳が長引いいているケースが少なくありません。気管支喘息では、約40%に逆流性食道炎が合併していると言われています。また肺気腫(COPD)でも逆流性食道炎が合併し、相互に悪影響を及ぼします。さらに逆流性食道炎には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が合併していることがあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群が進行すると、逆流性食道炎の症状が悪化し、咳も悪化することが報告されています。このように逆流性食道炎と呼吸器病は切っても切れない関係なのです。

問診・検査は?

当院では、逆流性食道炎の問診として以下のようなFスケールを用いています。胃酸逆流による症状と胃の運動不全(胃もたれ)症状についての質問項目があり、合計点数が8点以上になると逆流性食道炎の可能性が高いと考えられます。
逆流性食道炎の確定診断には、胃カメラや24時間食道pHモニタリングが有用ですが、胃薬をしばらく内服してみて症状が改善するかどうか見る方法(診断的治療)も有効です。

逆流性食道炎の問診票:Fスケール

NERD (非びらん性胃食道逆流症)とは?

胃カメラを受けても食道粘膜に異常を認めないにもかかわらず、胃の内容物が逆流し胸焼けや胸の痛みなどの症状が出る病気です。NERDも同じように長引く咳の原因になります。しかし、逆流性食道炎の治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の奏効率は、NERDに対しては50%程度といわれており、逆流性食道炎に対する奏効率70-80%と比較して治療効果が低いと言われています。食道や胃の動きが悪くなる病気である機能性ディスペプシアを合併することが多く、治療には消化管運動機能改善薬や漢方薬を併用することがあります。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアでは、胃の機能異常や食道・胃の粘膜の知覚過敏により、逆流性食道炎と似た胸やけ症状や胃もたれなどの症状が起こります。胃カメラをしても胃の粘膜はきれいで明らかな異常はありません。検査では異常がなく症状があるため、NERDともあわせて「機能性消化管障害」と呼ばれています。機能性ディスペプシアは、逆流性食道炎・NERDなどとオーバーラップ(20-60%)することが多いため、同時に治療することがあります。

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療方法

生活習慣の改善

ダイエット逆流性食道炎の方に対する薬以外の治療方法としては、以下のものが挙げられます。

  • 肥満の方に対する減量(ダイエット)
  • タバコを吸っている方は禁煙
  • 夜間症状が出る方では、遅い夕食を避ける(少なくとも4時間前に)
  • 寝る時には頭を高くする
  • アルコールの摂取を控える

減量をすると、内臓脂肪が減ってお腹の圧が下がるため逆流が減ります。また喫煙すると、胃と食道の間が緩むため、逆流が増えると言われています。そのため禁煙することで逆流が減ることが示されています。夕食の時間に関しては、早い夕食(就寝6時間前)と遅い夕食(就寝2時間前)を比べると遅い夕食の方が逆流が多いことが報告されています。そのため早めに夕食を取ったほうが良いと考えられており、最低でも就寝4時間前には食事をとっていただくことが望ましいと思われます。寝る時には、逆流を少なくするために枕の高さを10~20㎝程度高くすると良いと言われています。さらに横向きに寝るときは、左側を下にするとよいでしょう(胃の出口が緩み逆流が減るため)。アルコールは胃酸を増やすため、なるべく控えた方が良いでしょう。

胃酸分泌抑制薬

内服する女性主に3種類の胃酸分泌抑制薬があり、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、P-CAB、H2ブロッカーがよく使用されます。PPIはH2ブロッカーよりも効果が高いため、PPIを第一選択として使用します。効果はP-CABが最も強く、PPIが効果ない場合、もしくは有効性が乏しい場合P-CABを使用します。副作用は少なく安全な薬で、まれに下痢や便秘などの副作用があります。

胃酸分泌抑制薬

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)
    オメプラール、ネキシウム、タケプロン、パリエット
  • P-CAB
    タケキャブ
  • H2ブロッカー
    ガスター
消化管運動機能改善薬

胃の運動をよくして、胃もたれ症状を改善します。先に述べたように逆流性食道炎やNERDでは、機能性ディスペプシアと言われる胃の運動が低下する病気を合併することが多く、このような場合は消化管運動機能改善薬が効果あります。

使用される薬:ガスモチン、アコファイド

胃食道粘膜保護薬

食道や胃に膜を作って粘膜を保護してくれる薬になります。アルロイドという薬が最も使用されており、ドロっとした液体を20-30ml程度内服していただきます。

使用される薬:アルロイドG

漢方薬

六君子湯や半夏瀉心湯が胃の運動を改善する効果があると言われています。

使用される薬:六君子湯、半夏瀉心湯

手術治療

胃酸分泌抑制薬を使用しても逆流症状が強く、咳などが続く場合はまれに手術治療を検討することがあります。逆流を起こさないようにする手術を腹腔鏡などを使って行います。胸焼けなどの主症状の制御率は70-90%と良好な治療成績が報告されています。

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