胸痛

呼吸器が原因の胸痛

痛みのセンサー自体は、肺自体にはほとんどありません。肺を包む膜（胸膜）や肺の血管に痛みを感じる場所があります。胸膜に炎症が起こったり、肺がんのがん細胞が胸膜まで及んだ場合に胸に痛みが出てきます。このような場合は一日中痛みが続き、また深呼吸で痛みが悪化します。細菌が胸膜に炎症を起こすと、胸の痛みの他にも高熱や咳といった症状が現れます。気胸のように肺に穴が空いてしまった場合でも痛みが生じます。
気胸は突然痛みが出てきて、肩に痛みが及んだり、深呼吸で痛みが強くなります。時に息苦しさが現れることもあります（詳細はこちら）。 肺塞栓は、突然出現する胸の痛みで呼吸困難を伴います。長時間同じ姿勢でいる場合に、足に血の塊ができて、それが肺まで流れ飛んでいって肺の血管に詰まってしまうことで発症します。飛行機の長いフライトの後に発症することが知られており、エコノミークラス症候群とも呼ばれています。またピルを内服している女性では、血栓ができやすいと言われています。

心臓・血管が原因の胸痛

心血管疾患による胸の痛みは、重篤な病気であることが多く、命に関わるので以下の症状に当てはまる場合はすぐに病院を受診してください。

• みぞおちの締め付けられるような胸の痛み
• 胸が押さえつけられるような感覚（圧迫感）
• じっとりとした冷や汗を伴っている
• 突然起きた激しい痛みが２０分以上続く
• 胸と背中に張り裂けるような激痛に突然おそわれた

これらの症状は心筋梗塞や大動脈解離で見られることが多く、すぐに病院を受診し心電図検査やC T検査、処置をする必要があります。また階段を登ったり、運動をしているときに胸痛が出る場合も要注意です。心筋梗塞の前段階である狭心症の可能性があります。
そのほかにも大動脈弁狭窄症は、心臓から大動脈への出口が狭くなる病気で、胸痛のほかに息切れ、足のむくみ、失神などが起こります。

神経が原因の胸痛

肋間神経痛はよく見られる神経による胸の痛みで、疲労やストレスが続くと発症しやすく、「ズキズキとした持続する痛み」や「チクチクと針で刺されたような痛み」を感じることがあります。痛みは通常片側に起こり、肋骨の走行にそって痛みが出現します。
肋間神経痛の原因の一つに「帯状疱疹」があり、赤いボツボツとした皮疹や水ぶくれとともに「電気が走ったような激しい痛み」が出てきます。抗ウイルス薬や痛み止めで治療しますが、治療後も痛みが残ってしまい、痛みで長い間苦しめられることがあります。現在名古屋市では、帯状疱疹の予防ワクチンである「シングリックス」の接種を助成しており、50歳以上の方は積極的に接種するのが望ましいと思います。

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筋肉・骨が原因の胸痛

骨が痛みの原因となる場合は、肋骨骨折の他にも、骨と骨のつなぎ目に炎症が起こることで痛みが出ることがあります。肋軟骨炎は、肋骨と胸骨をつないでいる関節（胸肋関節）、または肋骨と肋軟骨をつないでいる部分（肋軟骨接合部）に炎症が起きて痛みが出る病気です。咳や腕を動かした時に痛みが出ることが多く、重いものを持ち上げたり、咳やくしゃみでも悪化します。痛みは、鋭い痛みや押されるような痛みです。
一箇所だけではなく、複数箇所痛みが出ることがあります。上記の箇所にピンポイントで圧痛がある場合、肋軟骨炎である可能性が高いと考えられます。肋軟骨炎は数週間で自然に良くなってくることが多く、痛み止めを飲んで改善するのを待ちます。症状が長く続くケースでも数ヶ月程度で改善してきます。