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空咳と湿性咳(痰の絡む咳)の違いとは?

<空咳と湿性咳(痰が絡む咳)の違いとは? 原因と対処法を詳しく解説>

 

空咳(乾いた咳)と湿性咳(痰が絡む咳)は、どちらもよく見られる呼吸器症状ですが、その原因や治療法は大きく異なります。ここでは、呼吸器内科専門医の立場から、空咳と湿性咳嗽の違いや代表的な原因疾患、効果的な対処法について詳しく解説します。


空咳(乾性咳嗽)とは?特徴と主な原因

空咳とは、痰を伴わない乾いた咳のことで、「コンコン」と続けて出る咳を指します。夜間や朝方に悪化しやすく、体力を消耗することもあります。咳喘息やアトピー咳嗽などのアレルギーによる咳が原因として多く、そのほかにも逆流性食道炎や間質性肺炎・肺線維症、薬剤性(薬の副作用)、百日咳などが挙げられます。

空咳の代表的な原因

① 咳喘息
 喘鳴(ゼーゼー音)や息苦しさを伴わず、長引く乾いた咳だけが続く病気です。気道が過敏になっているため、冷たい空気や煙などの刺激で咳が誘発されます。 詳しくはこちら

 

② アトピー咳嗽
 アレルギー体質に関連した咳で、好酸球性炎症が関与しています。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が効果があります。

 

③ 胃食道逆流症(GERD)
 胃酸が逆流し、食道や喉の粘膜を刺激することで咳が出ます。呑酸(酸っぱいものが上がってくる感覚)を伴うこともあります。詳しくはこちら

 

④ 間質性肺炎・肺線維症
 肺の奥で炎症や線維化が進行すると、刺激性の乾いた咳が慢性的に続きます。労作時の息切れを伴うことが多いです。詳しくはこちら

 


湿性咳嗽とは?痰が絡む咳の特徴と原因疾患

湿性咳嗽は、痰を伴う咳のことで、「ゴホゴホ」という音とともに、粘り気のある分泌物が排出されます。痰が喉や気道にたまりやすい朝方に強くなる傾向があります。痰が絡むというのは、気管支炎や肺炎、副鼻腔炎、肺非結核性抗酸菌症などの細菌感染症が多く、他にも肺気腫・COPD・気管支拡張症などが原因として挙げられます。

湿性咳嗽の主な原因疾患

① 急性気管支炎
 ウイルスや細菌感染により気管支に炎症が起こり、黄色や緑色の痰を伴う咳が出ます。風邪の一部として発症することもあります。詳しくはこちら

 

② 肺炎
 肺胞に細菌やウイルスが感染すると、高熱・呼吸困難・痰の多い咳を伴う肺炎になります。早期診断と抗菌薬治療が重要です。

 

③ 肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 長期の喫煙歴がある中高年層に多く見られる病気で、痰と咳が慢性的に続き、進行すると息切れも出てきます。詳しくはこちら

 

④ 気管支拡張症
 気道が異常に広がって痰が排出されにくくなる病気です。膿のような痰が出たり、痰に血が混じることもあります。

 

⑤ 副鼻腔炎・後鼻漏
 副鼻腔から鼻水が喉の奥に流れ込む「後鼻漏」により、痰がからんだような咳が生じます。朝方に咳がひどくなる場合はこの可能性があります。詳しくはこちら

 

⑥ 肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症)

 中高年の痩せ型女性に多く、長引く咳や痰の原因となります。時に血痰や微熱が出ることもあります。レントゲンやCTで粒状影や気管支拡張などの特徴的な所見が見られます。

 


空咳と湿性咳嗽の見分け方

空咳と湿性咳嗽は、痰の有無で見分けます。喉がイガイガし、痰が出ずに咳き込む場合は空咳の可能性が高く、ゴロゴロした感じや痰の排出を伴う場合は湿性咳嗽です。

特に2-3週間以上長引く咳は、自己判断で放置せず、呼吸器内科を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。

呼気NO検査や肺機能検査、アレルギー血液検査、胸部レントゲン・CT検査などを行い、原因が感染症なのかアレルギーなのか、など調べる必要があります。


空咳と湿性咳嗽、それぞれの対処法

空咳の対処法

空咳は咳の原因を特定したうえで治療することが基本です。咳喘息やアトピー咳嗽であれば、吸入ステロイドや抗アレルギー薬を使用します。胃食道逆流症が関係している場合は、胃酸分泌を抑える薬(PPIなど)が有効です。症状が強い場合には、咳中枢を抑制する薬(デキストロメトルファンなど)を補助的に使用します。

湿性咳嗽の対処法

湿性咳嗽では痰をしっかり排出することが大切です。水分を十分にとり、去痰薬(カルボシステイン、アンブロキソールなど)を用いることで痰を出しやすくします。肺炎などの細菌感染症がある場合には抗生物質の投与が必要です。副鼻腔炎が原因であれば、点鼻薬や抗菌薬、後鼻漏の治療を併せて行います。

COPDや肺気腫の場合は、吸入薬を使用することで痰や咳などの症状が減ります。


まとめ|咳が続く場合は専門医の受診を

咳には「空咳(乾いた咳)」と「湿性咳(痰を伴う咳)」の2種類があり、それぞれに異なる原因と対処法があります。どちらの咳も、放置すると慢性化や重篤な病気の見逃しにつながる可能性があるため、咳が長引く場合は自己判断せず、呼吸器内科での診断を受けることをおすすめします。

 

 

参考資料:

日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025:https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20250404085247.html

日本咳嗽学会 咳について:https://www.kubix.co.jp/cough/c_doctor.html

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