「喘息って治るんですか?」
「一生薬を使い続けないといけないんですか?」
こんな疑問、不安を持っている方、とても多いと思います。当院に通院されている喘息の患者様からもとてもよくされる質問でもあります。
今回は『喘息は治るのか?』という重要なテーマについて、最新の論文・データや考え方をできるだけ分かりやすくお話しします。
1. まず結論:喘息は「治る人もいる」が、多くは「寛解」を目指す病気
喘息は気管支でアレルギーの炎症が起こる病気で、吸入薬などの治療がなくても喘息症状もでない(完治)ところまで到達する人はごく一部です。現実的には、「治療を継続し症状・発作が長期間起きず、生活に支障がない状態=寛解」を目標とするのがよいとされています。
子供の場合は少し事情が異なり、30-50%程度の方が治るとも言われています。しかしながら、一部の方は大人になると再発するため注意が必要です。
ここでは、どのような人の喘息が治りやすいのか、治るためにはどのようなことをしたら良いのか、などについて解説したいと思います。
2. 「喘息が治る」の“治る”は3種類ある:症状がない/炎症もない/薬も不要
喘息の治る状態、これを「寛解(かんかい)」と言いますが、1種類ではありません。代表的には次の段階があります。
① 臨床的寛解(clinical remission)
吸入薬などの治療を受けていて症状が安定している状態のことをさします。
具体的には、少なくとも12か月以上、
・目立つ症状がない(ACTなどの質問票で確認)
・増悪(発作)がない
・肺機能が安定・最適化している
・全身ステロイド(飲み薬・点滴)が不要
などを満たす状態をさします。
② (治療下)完全寛解(complete remission)
吸入薬などの治療を受けている上で、「臨床的寛解」に加えて、気道の炎症が客観的に落ち着き、場合によっては気道過敏性(気道が刺激で狭くなりやすい状態)まで消失する、といった“中身”の改善まで含めた状態です。
③ 治療なし完全寛解(off-treatment remission)
さらに厳しく、治療薬を使わずに12か月以上保てる状態です。患者さんがイメージする「治った」に近いのはここですが、ここに到達できる人は限られます。

3. なぜ「症状がない=完治」ではないの?

喘息は、咳・息苦しさ・喘鳴(ゼーゼー)といった症状が消えても、気道の炎症や気管支の異常(リモデリング)が残ることがあります。
思春期以降に症状が落ち着く人がいる一方で、このような方の気道にも炎症が残っていることがあります。つまり、「いま症状がない」=「体質として完全に治った」とは言い切れず、後になって再燃する可能性が残ることがあります。この点が、症状がなくても喘息を「完治」と断言しにくい最大の理由です。
4. 子どもの喘息は治る?—“治る”は珍しくないが、大人で再発するケースも……
小児喘息は、成長とともに症状が軽くなる(あるいは消える)ことがあり、治療しなくても「治った」と感じる人もいます。
過去の研究で、18歳までに約半数が寛解、そのうち長期寛解は約1/4と報告した研究があります。子どもで寛解しやすい方向に働く要素としては、軽症、肺機能が良い、気道過敏性が軽い、アレルギー合併が少ないなどが、長期的に良い経過と関連しやすい、と言われています。
ただし、治ったあとに大人になってから喘息が再発する方も結構います。過去の研究による3割ぐらいの方が風邪などをきっかけにして再発すると言われています。
つまり、「子供の喘息は大人に比べて治りやすいが、再発する可能性がある」、ということになります。
5. 大人の喘息は治る?—特に「成人発症」は治ることが少ない
大人の喘息では、治療によって症状をコントロールすることはできますが、治ることが難しいと言われています。
大人の場合、正しく治療を開始すれば多くの方の症状は改善します。問題になってくるには、良い状態をその後維持できるかどうか、症状の再発を抑えることができるかどうかです。
大人の喘息を15年追跡した研究では、その後に症状再発が多く(寛解率は低く)、追跡時点でも多くが喘息を持続していました。他の研究では、数年喘息患者さんを見てみると、再発なく過ごせた方は6人に1人というデータもあります。そして肺機能が低い、気道過敏性が強いほど喘息が持続しやすい、という報告もあります。
また治療なしで喘息症状がでない状態の方(治療なし完全寛解:off-treatment remission)は、だいたい10%前後(数%〜高くて1〜2割台)と報告されています。
治りやすい(寛解)喘息の方の特徴としては
・軽症
・肺機能が良い
・若年
・喘息になってからの期間が短い
・気道過敏性が軽い
・併存症が少ない
・禁煙(or 非喫煙)
などが知られています。
以上から、「大人の喘息は治らない?」と聞かれたら、「治療で非常に良くコントロールできる人は多いけども、薬なしでずっと安定まで行ける人はとてもに少ない」という答えになります。

6. 実は「喘息じゃなかった」ケースもある:診断の再評価が重要
「治った気がする」背景に、そもそも喘息診断が確かでなかった可能性もあります。
過去の研究では、過去5年以内に医師から喘息と診断された成人を精密に再評価したところ、約33%で“現在の喘息を確かめられなかったと報告されています。実際当院に来院される方でも、胸部レントゲン・CT検査や肺機能検査・ピークフロー検査などを実施して、別の病気が判明する方もいます。この場合、吸入治療を終了し、新しく判明した病気を治療することで症状の改善が得られます。
またこれは、喘息の診断が非常に難しいということも一つの要因です。「医師が悪い」という話ではなく、喘息は症状の波があり、診断には呼吸機能検査や胸部レントゲンなどの客観的確認が重要、です。これらの検査機器はどこの病院にもあるわけでもないため、すぐに検査というのが難しいという事情もあります。
「薬を減らしたい/やめたい」と感じたときほど、診断の確からしさと現在の炎症の有無をセットで見直す価値があります。当院では、肺機能検査、呼気NO検査、胸部レントゲン・胸部CT検査、ピークフロー測定などを組み合わせて多面的に喘息かどうかを評価しています。
7. 「薬をやめたい」ときに押さえるべき考え方
喘息は調子が良いと自己中断しやすい病気です。しかし、症状が消えても炎症が残ることがあり、**中断で再燃→増悪(発作)**につながります。中止や減量を考えるときは、可能であれば次の項目をセットで確認するのが安全です。
・過去1年の増悪歴(救急受診、経口ステロイド、夜間症状)
・肺機能(FEV1など)
・炎症の指標(例:FeNO、好酸球、喀痰所見など施設で可能な範囲)
自己判断で中止せず、医師に一度相談してみましょう。
8. 喘息の「治る」を目指すために、患者さんができること
喘息が治りやすい(寛解)要素としては次のようなものがあります。
・禁煙(本人・受動喫煙の回避)
・良好な肺機能を保つ(早めの治療最適化、運動耐容能の維持)
・増悪を繰り返さない(感染対策、吸入を正しく行う)
・合併症を治療する(アレルギー性鼻炎、肥満、逆流、睡眠など)
禁煙は特に重要です。また肥満は喘息の状態を悪化させるため、運動や食事によって適切な体重を維持することも大切になってきます。喘息の症状再燃のきっかけの多くは、風邪などの感染症であるため、マスク・手洗いなどの感染対策やワクチン接種なども重要となってきます。
9. 喘息は「治る?」より「どの寛解を目指す?」が大事
喘息は「治ったように見える」ことはあるが、症状が消えても気管支に炎症やリモデリングが残ることがあります。
小児は治るが起こり得る一方で、再発も3割程度に見られます。そして大人の喘息は治るのが難しいと考えられています。ただし全員が治ることができないわけではないため、「薬の中止を考えたい」場合は、診断が正しいのかの再評価と気管支の炎症評価をセットで検討するのが重要となってきます。
当院では、肺機能検査や呼気NO検査・ピークフローなど実施し喘息の状態を評価すると同時に、胸部レントゲンやCT検査・血液検査などので本当に喘息なのか?を検討しています。また患者さん個々の状態に合わせて、治療を弱くしたり、また希望があれば中止できないか検討しています。
喘息治療でお困りの際は、一度当院へご相談ください。
記事作成:

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
医学博士・呼吸器専門医 表紀仁
喘息の詳しい記事はこちら
当院の呼吸器内科予約ページはこちら
<参考文献>
M Lommatzsch. Remission in asthma. Curr Opin Pulm Med. 2024 Mar 5;30(3):325–329.
https://journals.lww.com/co-pulmonarymedicine/fulltext/2024/05000/remission_in_asthma.19.aspx
D Thomas, et al. Asthma remission: what is it and how can it be achieved?. Eur Respir J. 2022 Nov 3;60(5):2102583.
https://publications.ersnet.org/content/erj/60/5/2102583
GA Westerhof. et al. Clinical predictors of remission and persistence of adult-onset asthma. J Allergy Clin Immunol . 2018 Jan;141(1):104-109.e3.
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749%2817%2930662-0/fulltext
喘息実践ガイドライン2024
https://jasweb.or.jp/guideline/guideline/
Global Strategy for Asthma Management and Prevention(喘息管理の国際指針)
