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喘息とカビの関係:対処法や治療について解説

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この記事の要約(忙しい方向け)

  • カビ(真菌)は喘息を悪化させる要因の一つで、感作(=アレルギー体質の獲得)があると発作が起きやすくなります。

  • 重症の喘息ではカビアレルギーを伴うタイプがあり、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)という病気も存在します。治療方針が異なるため、しっかり調べてどのタイプか判断することが重要です。

  • 環境整備(除湿・換気・掃除)は全員に有効です。またぜんそくの基本治療である吸入ステロイド薬/長時間作動型β2刺激薬を中心に行い、必要に応じて生物学的製剤(注射薬)を検討します。重症例やアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)では経口ステロイドや抗真菌薬(カビを抑える薬)を使用することがあります。

  • 台風や雷雨の後に発作が増える「サンダーストーム喘息」では、カビの胞子(Alternaria/Cladosporium など)も関与します。気象情報に注意をしましょう。

  •  

1. なぜ「カビ」が喘息を悪化させるの?

カビ(真菌)は、目に見えない胞子を空気中に放ちます。これを吸い込むと、アレルギー体質の方では気道のアレルギー炎症が起き、咳・喘鳴(ぜんめい)・胸苦しさなどが誘発されます。室内の湿潤・カビと喘息の発症・増悪には関連があると言われています。

 

<ポイント>

・室内湿度が高い(目安:40–60%を維持)

結露が多い

・風呂・台所・押し入れにカビ斑点

・こうした環境は、喘息悪化の“土壌”になります。

 

自宅や学校・職場の湿潤・カビ暴露が、喘息の発症や症状の悪化リスクを約30–50%高めるとの研究結果もあります。また喘息の約21%がカビ・湿潤が原因となっているというデータもあります。このように、カビと喘息は深い関係にあるのです。

 

喘息と関連のあるカビには以下のような種類があります。

・アスペルギルス(Aspergillus)

・アルテルナリア(Alternaria

・クラドスポリウム(Cladosporium)

・ペニシリウム(Penicillium)

 

 

2. カビ(真菌)関連の代表的な喘息病態

① カビ(真菌)感作を伴う重症喘息(SAFS)

  • 定義:重症喘息 + 真菌(例:Aspergillus, Alternaria, Cladosporium, Penicilliumなど)に対するアレルギー感作(皮膚テストや特異的IgE陽性) + アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の除外。

  • 特徴:一般的な喘息治療(吸入ステロイドなど)に反応しにくい、増悪を繰り返す、季節/気象の影響を受けやすい。

  • 治療の考え方:まずは通常の重症喘息治療を行っていきます。

② アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)

  • 定義:喘息患者で、アスペルギルス属というカビに対する強いアレルギー反応により気管支拡張・粘液栓などを来す病気です。

  • 診断:総IgE高値、A. fumigatus 特異的IgE/IgG、好酸球増多、胸部CTで中心性気管支拡張などの組み合わせで診断します。

  • 治療(最新推奨):ステロイドの内服薬またはイトラコナゾール(抗真菌薬:カビの薬)を使用します。

*SAFSとABPAは似ている病気ですが、別物です。

 

3. どんな症状が「カビ由来」を疑わせる?

  • 家や職場(湿気の多い場所)で症状が悪化し、外出で軽くなる

  • 雨天・雷雨・台風の後に発作が増える(サンダーストーム喘息)

  • 秋~初冬、梅雨~夏に咳・喘鳴が長引く

  • 喀痰が粘稠で固まりやすい茶色や黒の栓が出る

 

以上のような症状がある場合、カビのアレルギー感作やアレルギー性気管支肺アスペルギルス症のスクリーニングを考えます。

4. 検査:何を確認するの?

  1. アレルギーの検査:皮膚プリックテスト、特異的IgE(Aspergillus, Alternaria など)、総IgE、好酸球数、FeNO(呼気中一酸化窒素)などがあります。

  2. 画像:胸部CT(粘液栓・中心性気管支拡張はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症を示唆します)

  3. 喀痰検査:細菌・真菌検査、好酸球性炎症の評価

  4. 呼吸機能:スパイロメトリー、可逆性試験
     

 

5. 治療:土台は「環境 × 吸入治療」

① すべての方に:環境整備(最も費用対効果が高い!)

  • 室内湿度:40–60%を維持(除湿機・エアコンのドライ活用、結露対策)

  • 換気:入浴後・調理時は換気扇、家具は壁から数cm離して通気

  • 清掃:風呂・洗面・キッチン・窓枠のカビ斑点は速やかに除去

  • 寝具:マットレスの乾燥、週1回の天日干しまたは乾燥機

  • 空気清浄機(HEPAフィルター付き)はハウスダスト・花粉には有効です。真菌胞子にも一定の減少効果が期待できますが、湿度管理が最優先です。

② 薬物療法の基本

  • 吸入ステロイド(ICS)+長時間作動型β2刺激薬(LABA)が基本的治療です。

  • 増悪反復例には、LAMAマクロライド少量投与を検討します。

  • 生物学的製剤(オマリズマブ、メポリズマブ、ベンラリズマブ、デュピルマブ、テゼペルマブ等)はフェノタイプ・バイオマーカーに応じて選択します。

 

③ 抗真菌薬(カビの治療薬)は“適応を絞って”

  • アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)急性期にステロイド内服薬 or イトラコナゾール(抗真菌薬)が推奨されています。

 

6. 台風・雷雨と「サンダーストーム喘息」

雷雨の後に急増する集団発作をサンダーストーム喘息と呼びます。伝統的にイネ科花粉の微細化が注目されてきましたが、真菌胞子(Alternaria、Cladosporium など)の濃度上昇も関連とする報告が増えています。

詳細はこちらの記事:「天気・気圧・寒暖差で喘息が悪くなる?—呼吸器内科医が解説

 

7. よくある質問(FAQ)

Q1. カビ取り剤は喘息に悪いですか?
A. 塩素系洗浄剤の刺激臭は一時的に咳を誘発します。使用時は換気・マスク・手袋をしましょう。洗浄でカビ負荷を下げるメリットは大きく、正しい防護+短時間作業がコツです。

 

Q2. 空気清浄機があれば湿度管理は不要?
A. 不要ではありません。カビ繁殖は湿度依存のため、まず湿度40–60%の維持が重要です。空気清浄機は補助です。

 

Q3. 抗真菌薬を飲めば治りますか?
A. すべての喘息に有効ではありません。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)では標準治療の一つですが専門医での適応判断が必要です。

 

Q4. どの生物学的製剤が向いている?
A. IgE・好酸球・FeNOなどの2型炎症バイオマーカー、合併症(鼻茸、アトピー性皮膚炎など)を総合して選びます。テゼペルマブは非2型でも効果がある可能性があります。主治医とご相談ください。

 

8. ご自宅で今日からできる「具体策」チェックリスト

・加湿器の設定見直し(湿度計で40–60%を確認)

・入浴後は換気扇を30分以上/キッチンは調理中も換気

・窓・壁の結露ふき取り、カビ斑点の早期除去

・押し入れ・クローゼットにスノコ除湿剤

・エアコンフィルター掃除(月1回目安)

・寝室は朝に換気、布団は定期乾燥

・雷雨・台風予報日は発作対策(予防吸入の確認、外出時はマスク)

 

9. 当院からのメッセージ

湿気やカビ(真菌)が関わる喘息は、住環境の整え方が症状を大きく左右します。当院では検査(アレルギー評価・呼吸機能・画像)から具体的な環境アドバイス、治療の見直しまで、実践的にサポートします。

「ちゃんと吸えているか」「本当に今の治療が合っているか」を、一緒に確認しましょう。受診に迷ったら、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

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気管支喘息の詳しい記事はこちらから

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表紀仁

 

参考文献:

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