「豆腐を食べたら口の中がかゆい」「豆乳でじんましんが出た」「味噌汁は大丈夫だけど納豆は不安」――大豆アレルギーは、症状の出方や原因(アレルゲンの種類)によって注意点が変わるのが特徴です。この記事では、初めての方にも分かりやすく、受診や生活に役立つポイントを整理します。
この記事で分かること
・大豆アレルギーの主な症状(軽いもの〜重いもの)
・似ているけど別物:「大豆そのもののアレルギー」と「花粉−食物アレルギー症候群(PFAS)」
・検査(血液検査・コンポーネント・負荷試験)で何が分かるか
・豆腐・豆乳・納豆・味噌・醤油・大豆レシチンなど、食品別の注意点
・日常生活での対策と、危険サイン(救急受診の目安)
大豆アレルギーの症状
大豆を食べた(飲んだ)後、数分〜2時間以内に次のような症状が出ることがあります。特に口の中のかゆみや腫れ、イガイガとした違和感などはよくある症状です。
よくある症状
・口の中・のどのかゆみ、違和感、唇の腫れ
・じんましん、皮膚の赤み、かゆみ
・腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
・咳、喘鳴(ゼーゼー)、息苦しさ
すぐに救急対応が必要な症状(アナフィラキシーのサイン)
・声がかすれる、のどが詰まる感じ、呼吸が苦しい
・強い腹痛・繰り返す嘔吐
・ぐったりする、意識が遠のく、冷や汗、血圧低下
⇒これらは命に関わる可能性があります。既往がある方は主治医と「緊急時の対応」を事前に決めておくことが大切です。
大豆アレルギーは大きく2タイプある(ここが重要)
「大豆アレルギー」と一言で言っても、臨床的には大きく分けて2つのパターンがあります。
1)大豆そのもの(貯蔵タンパク)によるアレルギー
乳幼児〜小児で多く、豆腐・豆乳・きな粉・枝豆などで症状が出やすいタイプ。
一般に、種子に多い貯蔵タンパク(例:Gly m 5、Gly m 6)が関与し、症状が強くなることがあります。
2)花粉−食物アレルギー症候群としての大豆(口のかゆみ中心)
成人に多く、花粉症(例:シラカンバ・ハンノキなど)と関連して、大豆を食べたとき口腔内症状(口のかゆみ・腫れ・イガイガ)が中心に出ることがあります。
この関連でよく話題になるのが、大豆のPR-10(Gly m 4)という成分です。これは大豆に含まれるアレルゲン成分の一つで、シラカンバやハンノキなどカバノキ科花粉の主要アレルゲン(Bet v 1)と構造が似ています。そのため花粉症のある方では、花粉に対するIgE抗体がGly m 4にも交差反応し、豆乳・豆腐などの摂取で口の中やのどのかゆみ、唇の腫れを起こすことがあります。多くは口の症状中心ですが、摂取量が多い、豆乳のように液体で吸収が早い、体調不良や運動などの条件が重なると、じんましん、咳、息苦しさ、腹痛など全身症状に進むこともあります。
どんな食品で起こりやすい?(豆腐・豆乳・納豆・味噌・醤油)
大豆は加工形態が多く、「何をどれだけ、どんな体調で食べたか」によってリスクが変わります。
大豆を含む代表例
・大豆・枝豆
・豆腐、油揚げ、厚揚げ
・豆乳(無調整・調製とも)
・納豆、きな粉、おから、ゆば
・味噌、醤油
・大豆たん白(ソイプロテイン)、大豆粉(加工食品・パン・菓子・惣菜などに入ることも)
・大豆レシチン(チョコや菓子、加工食品など)

味噌・醤油は「大豆が入っていても摂取可能と言われることがある」…が自己判断はNG
発酵・加工によりタンパクが分解され、一般に摂取可能と言われる場合がある食品例として「味噌の大豆」「醤油の小麦と大豆」等が示されています。
ただし、これは“誰でも安全”という意味ではありません。症状の型(貯蔵タンパク型かPFAS型か)、既往の重症度、摂取量で変わるため、自己流の再チャレンジは避け、必要なら医療機関で評価しましょう。
検査と診断:血液検査“だけ”では決められない
診断は、基本的に ①詳しい問診+②検査+③必要なら負荷試験 の組み合わせです。
1)問診(いちばん重要)
- 食べたもの(豆腐・豆乳・醤油・加工食品)
- 食べた量、調理法(加熱・発酵など)
- 発症までの時間
- 症状の内容(皮膚・呼吸器・消化器・全身)
- 同時要因(運動、体調不良、飲酒、鎮痛薬など)
2)血液検査(特異的IgE)・コンポーネント検査
「大豆IgEが陽性=必ず食べてはいけない」ではありません。 ただし、評価の材料として重要で、大豆のコンポーネントとしてGly m 4(PR-10)があります。コンポーネント検査は、「大豆そのもの」ではなく、その中に含まれる“原因成分(アレルゲン分子)”ごとにIgE抗体を調べる血液検査です。当院でも「大豆」の粗抗原とコンポーネントである「Gly m 4」を両方調べることができます。
検査費用は、大豆・Glym4の検査それぞれに330円(保険診療・3割負担の場合)程度かかります(検査費用のみ)。別途判断料などがかかります。
3)食物経口負荷試験
必要時に医療機関で行い、「実際に症状が誘発されるか」「どのくらい食べられるか」を確認します。当院では食物傾向負荷試験は実施しておりませんので、必要であれば総合病院を紹介いたします。
日常生活の対策(再発予防のコツ)
1)まずは原因食品の“型”をはっきりさせる
- 豆乳・きな粉・ソイプロテインで強く出る → 貯蔵タンパク型の可能性
- 口のかゆみ中心、花粉症がある、生の果物でも口がかゆい → 花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)の可能性
型が違うと、避けるべき食品の範囲や注意ポイントが変わります。
2)表示の見方(パッケージ)
日本では、アレルゲン表示は「必ず表示される8品目」と「表示が勧められている20品目」があり、大豆は“表示が勧められている”側(特定原材料に準ずるもの)として掲載されています。 加工食品では見落としやすいので、原材料欄で「大豆」、「大豆たん白」、「大豆粉」、「大豆レシチン」などをチェックしましょう。
3)外食・惣菜は「見えない大豆」に注意
- ドレッシング、ソース、練り製品、つなぎ(大豆たん白)
- 揚げ物の衣、加工肉、スイーツの一部 など
4)薬(エピネフリン自己注射など)と緊急時の行動計画
過去に全身症状がある方は、主治医と
- 何が起きたら救急要請か
- どの薬をいつ使うか
- 運動・入浴・飲酒の制限
まで含めて、具体的に決めておくと安心です。
アナフィラキシーの既往のある方には、当院(名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック)でエピペン(エピネフリン自己注射薬)の処方を行っております。

よくある質問(FAQ)
Q1. 大豆アレルギーは治りますか?
乳幼児期に発症した大豆アレルギーは、成長とともに耐性化するケースもあります。一方、PFASとしての大豆反応は花粉感作と関連するため、経過が異なります。「どのタイプか」を見極めた上で、医師と方針を相談するのが近道です。
Q2. 豆腐はダメだけど、味噌汁や醤油は大丈夫…続けていい?
味噌・醤油は一般に摂取可能と言われる場合がある一方で、個人差が大きいです。 症状が少しでも出るなら中止して受診をしましょう。自己判断の“増量チャレンジ”は避けましょう。
Q3. 運動すると悪化するのはなぜ?
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の可能性があり、大豆でも報告があります。 「食後数時間の運動で出る」など、パターンがあれば必ず医師に伝えてください。
Q4. 検査で大豆IgEが陽性でした。食べてはいけませんか?
陽性=即禁止ではありません。症状・摂取状況・必要に応じて負荷試験を行って総合判断します。
受診の目安
・大豆摂取後にじんましん、咳・息苦しさ、腹痛・嘔吐が出た
・口の中の症状でも、繰り返す/悪化している
・運動・入浴・体調不良で悪化する気がする
・乳幼児で、原因食品が分からず不安
当院からのメッセージ
大豆アレルギーは、「大豆そのもののアレルギー」なのか、花粉症に関連するPFASなのかで対策が変わります。自己判断で除去を広げすぎると、食事の幅が狭まり栄養面の負担になることもあります。
当院では、症状の経過を丁寧に伺い、必要に応じて検査・生活指導を行いながら、“安全に、できるだけ普通に食べられる”を目標に一緒に整理していきます。不安な方は早めにご相談ください。
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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁
参考文献:
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③ Kleine-Tebbe J, Vogel L, Crowell DN, Haustein UF, Vieths S. Severe oral allergy syndrome and anaphylactic reactions caused by a Bet v 1-related PR-10 protein in soybean, SAM22. J Allergy Clin Immunol. 2002 Nov;110(5):797-804. doi:10.1067/mai.2002.128946. PMID:12417891.
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