花粉の時期に咳が止まらないのは、のど・鼻の炎症(後鼻漏)だけでなく、咳喘息/喘息の悪化や“咳過敏”が関与することがあります。原因の見分け方、受診の目安、治療とセルフケアをまとめました。
花粉の時期に咳が増える「よくあるパターン」

花粉シーズン(スギ・ヒノキ・イネ科など)に咳が増える方は少なくありません。背景には大きく分けて次の3つが関わります。
① 鼻〜のどの炎症(花粉症)で咳が出る
② 気道(気管支)のアレルギー反応で咳が出る(咳喘息/喘息)
③ 咳反射が過敏になり、刺激に弱くなる(“咳過敏”)
花粉症=鼻症状だけ、と思われがちですが、実際には“咳が主役”になることもあります。
1)花粉症(鼻炎)から咳が出る仕組み:後鼻漏・のど刺激
花粉で鼻の粘膜が腫れると、鼻水が増えたり粘りが出たりします。すると
- ・鼻水がのどへ流れる(後鼻漏)
- ・のど(咽頭・喉頭)がイガイガして咳が出る
- ・口呼吸が増えて、のどが乾燥し咳が出る
という流れが起こります。慢性的な上気道由来の咳は上気道咳症候群(UACS)言われ、後鼻漏が目立たなくても治療に反応する場合があります。
このタイプを疑う症状
- ・くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみがある
- ・のどの違和感(痰が絡む/払いたい感じ)が強い
- ・横になると咳が増える(のどに流れる感じ)
- ・咳は出るが、ゼーゼーははっきりしない
2)花粉で「咳喘息・喘息」が悪化することがある
花粉は鼻だけでなく、気管支のアレルギー炎症も揺さぶります。特に
- ・夜間〜早朝の咳
- ・会話・笑い・運動・冷気で咳
- ・風邪をひくと長引く
- ・毎年同じ季節に繰り返す
がある場合、咳喘息/喘息の関与を疑います。
また、花粉飛散が多い時期は、喘息の救急受診や入院が増えることが報告されています。
「花粉症の咳」と「喘息の咳」が同時に起きているケースも多く、ここを見落とすと咳が長引きやすいです。
実際、気管支喘息の方の約15%程度方は花粉をきっかけに増悪したという報告があります。
3)“咳過敏(咳反射の敏感化)”が起きやすい
花粉アレルギーのある方では、咳反射が刺激に対して敏感になりやすいことが示されています。
その結果、
- ・香水・煙・温度差・会話など、軽い刺激で咳が出る
- ・「咳が出そう」というムズムズ感が強い
- ・画像や聴診で大きな異常がなくても咳が続く
といった状態になります。
「花粉の咳」セルフチェック
次の質問に〇が多いほど、治療の当たりがつきやすくなります。
A:鼻・のど由来(花粉症/UACS)寄り
- ・鼻づまり/鼻水/くしゃみ/目のかゆみがある
- ・のどに流れる感じ、痰払いが多い
- ・横になると悪化しやすい
B:咳喘息/喘息寄り
- ・夜間〜早朝に咳が増える
- ・運動・冷気・会話で咳が誘発
- ・毎年同じ季節に繰り返す
- ・家族に喘息/アトピーがいる、本人もアレルギー体質
C:咳過敏寄り
- ・香水・煙・温度差で咳が出る
- ・“ムズムズ”が強く、咳が連発しやすい
当院での検査
症状の組み合わせにより、必要に応じて以下を行います。
- ・呼吸機能検査(スパイロ)
- ・気道炎症の評価(例:FeNO など)
- ・胸部X線(必要ならCT)で他疾患の除外
- ・鼻症状・副鼻腔炎の評価(必要に応じて耳鼻科連携)
- ・生活環境(花粉・黄砂・PM2.5・受動喫煙)や服薬状況の確認
・特異的IgE抗体検査(スギ・ヒノキなど)
上記の検査を組み合わせて、気管支喘息・咳喘息などの診断を行っています。

治療の考え方:原因に合わせて「鼻」と「気管支」を分けて攻略
1)鼻・のど(花粉症/UACS)対策
- 抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
- 点鼻ステロイド(鼻の炎症をしっかり抑える)
- 鼻洗浄、保湿、口呼吸対策
点鼻ステロイドで、花粉症に伴う咳が改善した報告もあります。
2)咳喘息/喘息対策
- 吸入ステロイド(必要なら吸入気管支拡張薬の併用)
- 体質や重症度により追加治療(例:抗ロイコトリエン薬 等)
- 発作リスクが高い方は、飛散ピーク前からの“先手”が有効

3)咳過敏が強いとき
- 原因治療(鼻炎・喘息・逆流など)の最適化がまず最優先
- 刺激回避(香料、喫煙環境、冷気、乾燥)
- 長引く場合は、リフヌアなどの咳過敏を抑える薬を使用します
自宅でできる:花粉シーズンの咳を減らすコツ
- 帰宅時:衣類の花粉を払う、洗顔・うがい・シャワー
- 室内:換気の工夫(飛散の多い時間帯を避ける)、空気清浄、寝室の湿度管理
- 外出:マスク+メガネ、帽子/髪に花粉がつきやすいので工夫
- のどケア:就寝前の保湿、寝室の乾燥対策、口呼吸対策(鼻づまり治療が重要)
当院からのメッセージ
花粉シーズンに咳が増えると、「花粉症だから仕方ない」と我慢してしまう方が少なくありません。ですが、咳の原因は 鼻(花粉症・後鼻漏) だけでなく、咳喘息・喘息の悪化 や、気道が刺激に敏感になる “咳過敏” が重なっていることも多く、対処法が変わります。
当院では、症状の出方(夜間・運動時・会話時など)や鼻症状の有無を丁寧に伺い、必要に応じて呼吸機能検査や気道炎症の評価を行いながら、「鼻の治療」と「気管支の治療」を分けて最適化します。市販薬で一時的に良くなっても、毎年繰り返す咳は治療の調整で楽になることが多いです。
「春になると咳が続く」「夜や朝方に咳で目が覚める」「息苦しさやゼーゼーもある」「2〜3週間以上咳が長引く」—このような場合は、早めにご相談ください。つらい咳を我慢せず、日常生活を少しでも快適に過ごせるよう、一緒に原因を見極めていきましょう。
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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁
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