「サラダを食べたら口の中がかゆい」「トマトで唇が腫れる」「生野菜だけダメで、加熱すると平気」──こうした訴えで多いのが、野菜アレルギーです。実は野菜アレルギーの多くは、いわゆる“食物アレルギー”の中でも 花粉症と関係するタイプ(PFAS:花粉‐食物アレルギー症候群/OAS:口腔アレルギー症候群)として起こります。新鮮な果物や野菜で、口やのどの違和感・腫れが出るタイプが典型です。
この記事では、
・野菜アレルギーの仕組み(PFAS/OAS、加熱で変わる理由)
・よくある症状と危険サイン
・検査・診断の流れ
・日常でできる対策(食べ方・調理・受診目安)
を分かりやすく解説し、相談の多い“代表的な野菜6つ”(トマト・ナス・きゅうり・にんじん・セロリ・じゃがいも)を、特徴・交差反応(花粉との関係)・注意点まで詳しく説明します。
当院では以下の項目の野菜アレルギー検査が可能です。
トマト・たまねぎ・じゃがいも・にんじん・ほうれんそう・たけのこ・やまいも・かぼちゃ・さつまいも・ニンニク・セロリ・パセリ・ビール酵母・マスタード・アボカド
1項目につき検査費用のみで330円(保険診療・3割負担の場合)になります。
アレルギー症状がなく、健康診断・人間ドッグを目的とした場合は自費検査(1項目あたり1,100円)となります。
野菜アレルギーで多い2つのタイプ
1)花粉症が原因のタイプ→ PFAS(花粉‐食物アレルギー症候群)/OAS(口腔アレルギー症候群)
・花粉症で作られたIgE抗体が、花粉と似た構造のタンパクを含む野菜に反応して起きます(これを“交差反応”と言います)。
・症状は口の中・唇・のどに出やすく、生で出やすいのが特徴。加熱で症状が弱くなることも多いです。
下記は代表的な花粉と野菜の関連(交差反応)です。 
2)その野菜自体が“犯人”のタイプ(一次感作型)
・一次感作型は、花粉の交差反応ではなく、野菜そのもの(または加工・曝露環境)で感作されて発症するアレルギーです。
・加熱しても症状が出ます。そのため加工品・ソース・スープ等でも症状が出ることがあります。
・口腔症状だけでなく、全身症状(蕁麻疹・喘鳴・腹部症状・アナフィラキシー)が起こりやすいと言われています。
野菜での代表例
・トマト・ナスなどは、LTPというタンパク質が関連していることがあります。これらは熱や酸・消化に比較的強いと言われています。
・マスタード(からし)は主要アレルゲン Sin a 1は耐熱性・消化耐性が強いとされ、重症反応の報告もあります。「サラダは平気でも、ドレッシング/マスタード/スパイスで出る」などはここを疑います。
どんな症状が出る?よくある症状と“危険サイン”

よくある症状(軽症〜中等症)
・口の中・舌・唇のかゆみ、ピリピリ、軽い腫れ
・のどのイガイガ、違和感
・じんましん(皮膚が赤く盛り上がる)
・目のかゆみ・鼻水が同時に出る(花粉症が強い時期に増えることも)
受診を急いだ方がいい“危険サイン”
・息苦しい、ゼーゼーする、声がかすれる
・全身のじんましん+気分不良(めまい、ぐったり)
・唇・まぶた・顔が急に腫れる
・腹痛、嘔吐、下痢が強い
・同じ食品で反応が強くなってきた
これらの症状はアナフィラキシーと呼ばれる「重症型」のアレルギー症状の可能性があり、すぐに病院を受診した方がよい状態です。
PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)は多くが口周り中心ですが、重い反応が起きる例もあるため、症状のパターン確認が大切です。
「アレルギーっぽいけど違う」こともある(紛らわしい例)
・刺激:大根おろし・辛味成分・酸味で口がピリピリ
・ヤマイモ:ヤマイモの皮の近くには 「シュウ酸カルシウムの針状結晶」が多く含まれていて、すりおろす/噛むことでこの微細な針が粘膜に当たり、チクチク刺激=かゆみとして感じます。いわば「細かいトゲが刺さる」イメージです。
・口内炎・咽頭炎:粘膜が荒れていてしみる
「毎回同じ野菜で、同じ症状が繰り返される」ならアレルギーを疑います。

原因の正体:アレルゲン分子って何?
PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)を理解する近道は、「野菜の中の“どのタンパク”に反応しているか」です。代表的なアレルゲンタンパクには以下のようなものがあります。
・PR-10(Bet v 1関連):加熱や消化に弱く、生で口の中だけになりやすい
・プロフィリン:いろいろな植物に広く存在する“汎アレルゲン”
・LTP(脂質転送タンパク):熱や消化に比較的強く、症状が強く出ることがある(個人差あり)
診断と検査:何を調べるの?
① 問診が最重要
・どの野菜?(生/加熱)
・どのくらいで症状?(すぐ/数時間後)
・花粉症は?(スギ、シラカバ、ヨモギ、ブタクサ、イネ科など)
・運動・飲酒・NSAIDs(痛み止め)・体調不良とセットで悪化しないか
② 血液検査(特異的IgE)
PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)では、野菜や花粉などを中心に特異的IgE抗体検査(血液検査)を実施しています。
1項目につき検査費用のみで330円(保険診療・3割負担の場合)になります。アレルギー症状がなく、健康診断・人間ドッグを目的とした場合は自費検査(1項目あたり1,100円)となります。
当院では以下の野菜をアレルギー検査することができます。

③ 食物経口負荷試験・皮膚テスト
食物傾向負荷試験は、 「本当に食べられないか」「どの調理ならOKか」を、医療機関で安全に確認する方法です。皮膚テストでは、生の野菜での皮膚テスト(prick-to-prick)を行います。これらは当院(名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック)では実施していません。
日常でできる対策(食べ方・調理・生活)
- “生だけダメ”なら加熱を試す(スープ、煮物、焼くなど)
- 皮にアレルゲンが多い場合もあるので、皮むきで軽くなる人もいます(例:トマトなどは報告あり)。
- 花粉症の季節は反応が出やすいことがあるため、その時期は慎重に。
- 反応が強い人は、運動・飲酒・体調不良のときに生食を避ける。
- 一度でも全身症状が出たなら、自己判断での再チャレンジは避けて受診しましょう。
野菜アレルギー代表6選と特徴
ここからは、相談が多く、検索でもよく見かける代表例として、トマト/ナス/きゅうり/にんじん/セロリ/じゃがいもを取り上げます。なお、野菜アレルギーは PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)など花粉との関連で語られることが多く、各花粉と交差する野菜の例が示されています。
1)トマトアレルギー:スギ花粉とも関連しやすい代表格
よくある症状
・生トマトで唇・口の中がかゆい、腫れる
・ミニトマトや完熟で強い/皮で強い、など個人差があります
特徴
・スギ・ヒノキ花粉などとの関連が指摘され、PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)として起こることがあります。
・トマトは、PR-10やプロフィリン、LTPなど複数の分子が関与し得るとされ、タイプによって「加熱で平気かどうか」が変わります。
食べ方の工夫
・加熱(トマトソース、スープ)で軽くなる人が多い一方、強い反応の人は注意
・まずは“少量・加熱”から医師と相談して方針を決めるのが安全です
2)ナス(なす)アレルギー:口の症状〜全身反応まで幅がある
よくある症状
・口の中のかゆみ、のどの違和感
・じんましん、かゆみ
特徴
・ナスは報告自体は多くありませんが、症状の出方は多様です。
・まれにアナフィラキシーの症例報告もあり、「軽い口の症状だけ」と決めつけないことが重要です。
ポイント
・生での摂取は多くない野菜ですが、漬物やサラダ、加熱が不十分な料理で症状が出る人もいます
・初回から強く出るより、「以前より強くなっている」場合は受診をおすすめします
3)きゅうりアレルギー:ウリ科・花粉との関係を疑う
よくある症状
・生きゅうりで口の中がかゆい、のどがイガイガ
・サラダで出るが、加熱料理(炒め物など)で出にくい
特徴
・PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)では、花粉の種類によって、反応しやすい食物群が変わることが示されています。
・きゅうりはウリ科で、同じ系統の果物(メロン・スイカなど)に反応がある人は要注意、と考えられています(※個人差が大きい)。
対策
・まずは生食を避けて加熱、それでも症状が出るなら医療機関へ
・“浅漬け・冷やし中華”など生に近い形で症状が出やすい人もいます
4)にんじんアレルギー:ヨモギ・シラカバ系のPFASでよく登場
よくある症状
・生にんじん(スティック、サラダ、ジュース)で口の中がかゆい
・のどの違和感
特徴
・ヨモギ花粉症の人で、セリ科(にんじん・セロリ等)に反応が出る例が報告されています。
・シラカンバ・ハンノキ花粉症の方は、にんじん以外にも果物で症状が出ることがあります。代表的なものとしては、りんご・もも・さくらんぼ・セロリ・大豆(豆乳)などがあります。
食べ方の工夫
・しっかり加熱(煮物、スープ)で食べられる人が多い
・にんじんジュースは生の濃縮になりやすく、症状が強く出る人がいるので注意
5)セロリアレルギー:ヨモギ/シラカバ+“スパイス”にも注意
よくある症状
・生セロリで口やのどがかゆい、腫れる
・セロリ塩・スープの香味で違和感(人による)
特徴
・ヨモギ花粉症の人で、セリ科野菜(にんじん、セロリ等)に反応する例があるとされています。
・コリアンダーやフェンネルなどのスパイス・ハーブにアレルギーを持っている方もいます。
対策
・食べ物そのものだけでなく、スープ(ブイヨン・コンソメなど)・香味野菜・加工品(出汁、シーズニング等)も含めて、症状の出方を記録すると診断が進みます
6)じゃがいもアレルギー:生(調理中)で出る人も、加熱で出る人も
よくある症状
・生のじゃがいもに触る・すりおろすと手がかゆい(接触症状)
・食べると口の違和感、じんましん
特徴
・花粉との交差反応の例として、じゃがいもが挙げられる資料があります。
・必要に応じて新鮮な果物・野菜での皮膚テスト等を検討します。
ポイント
・「食べてダメ」よりも、「調理中の生で手が荒れる・かゆい」から気づくケースもあります
・反応が強い場合は、自己判断で続けず医師へ
よくある質問(FAQ)
Q1. 加熱すれば食べていい?
PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)の典型では、原因タンパクが熱に弱く、加熱で食べられることがあります。ただし、毎回強く出る/加熱でも出る/全身症状がある場合は自己判断しないでください。
Q2. 検査で「陰性」なら食べても大丈夫?
PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)は検査(特異的IgE抗体検査)だけで決めきれないこともあり、問診や必要に応じた追加検査が重要です。
まとめ
野菜アレルギーは、「野菜が悪い」というより花粉症と関係したPFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)やOAS:口腔アレルギー症候群として起きることが多く、生で出やすく、加熱で軽くなるのが典型です。
一方で、ナスのように幅広い症状があり得たり、LTPなどが関与すると重くなり得るため、「毎回同じ」「強くなってきた」「全身症状がある」場合は医療機関で評価するのが安全です。
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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
医学博士・呼吸器内科専門医 表紀仁
参考文献・参考資料
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