痰に血が混じる(血痰)

痰に血が混じるという症状は「血痰(けったん)」と呼ばれており、血液の混じる量が増えて痰全体が血になると「喀血」と呼ばれます。 血痰は主に気管支や肺などの呼吸器臓器からの出血により起こりますが、他にも口や喉の出血、鼻出血が混じることによっても起こります。時には、食道などの消化器系の出血(吐血)と判断が難しい場合もあります。

以下のようにすぐに病院に受診した方が良いケースもあるので、注意が必要です。

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血痰の原因は?

咳をする女性気管や気管支からの出血の場合は、腫瘍(肺がん)や気管支結核、気管支拡張症などがあります。 肺から出血している場合は、肺がん肺結核非結核性抗酸菌症、肺塞栓、肺胞出血などがあります。肺胞出血は、肺の血管から血がにじみ出ていく病気で、膠原病・血管炎・薬剤性(血をサラサラにする薬の内服)などが原因となります。肺胞出血は、病気が進むと時に重篤な呼吸不全を対するため、慎重な管理と治療を必要となります。

これらの病気のうち、肺結核肺がんは数週間血痰が続き、微熱や体重減少などの他の症状を伴います。肺塞栓では、急激に発症することが特徴で、息苦しさ胸の痛みを伴うことがあります。

意外に多いのが、鼻血が後ろに垂れ込むことで、血が痰に混じるケースです。鼻の奥で出血した場合は、鼻から血が出てこないこともあります。その他にも、食道や胃から出血した場合に、血痰や喀血のように見えることがあります。

↓重篤な肺胞出血の方の胸部レントゲン・CT検査:肺全体が真っ白になっていることがわかる
CT検査

どのような検査をするのか?

CT検査血液中の酸素濃度(SpO2)を測定し、低い場合はすぐに総合病院へ紹介し入院治療が必要です。血液中酸素濃度が正常の場合は、胸部レントゲン検査胸部CT検査を行い、肺がん肺結核などの重篤な病気が隠れていないか調べます。結核や非結核性抗酸菌症などの感染症が疑わしい場合は、痰の検査を追加します。これらの菌は検査で検出されにくく、3日間連続(合計3回)で起床時に痰を採取してもらうこともあります。
以上の検査を行っても原因がはっきりしない場合は、気管支鏡検査を行う必要があるため、より大きな病院へ紹介します。

おもて内科・呼吸器内科クリニックでは、胸部レントゲン検査・胸部CTを来院日に行うことができます。

どのような治療をするか?

服薬する女性治療方法は原因によって大きく変わってきます。
出血が少量の場合は、血止めの薬(トラネキサム酸)を内服して、自宅で安静にしていただき経過を見ます。血圧の変動する運動や入浴・飲酒なども控えた方が良いでしょう。抗凝固薬や抗血小板薬などの血をサラサラにする薬を内服している方では、内服を中止していただきます。 非結核性抗酸菌症肺結核などの感染症が原因の場合には、抗生剤や抗結核薬などの投与を行います。
出血が多量の場合は、総合病院へ紹介し、気管支鏡や動脈塞栓術(カテーテル治療)による治療を検討していただきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 血痰と「喀血(かっけつ)」は違うのですか?

はい、違います。
血痰は「痰に少し血が混じる」程度ですが、喀血は「血液そのものを吐く」ような状態です。喀血は大量出血や呼吸困難につながる危険があり、すぐに病院を受診する必要があります。そのほかに「吐血(とけつ)」は、食道や胃などの消化器から血が出る状態をさします。

Q2. どんな病気で血痰が出るのですか?

主な原因疾患には以下があります。

Q3. 何科を受診すればいいですか?

基本的には”呼吸器内科”です。
痰や咳、血痰は気道や肺から出る症状なので、呼吸器内科が最も適しています。お近くに呼吸器内科がない場合は一般内科でも構いませんが、必要に応じて専門医に紹介してもらいましょう。

Q4. 血痰が一度だけ出たのですが、様子を見ても大丈夫ですか?

一度きり・ごく少量(点状のものが少し混じる程度)の血痰で、風邪や強い咳が原因と考えられる場合は、様子をみていてもよい場合があります。
ただし、以下のような症状がある場合は早めに受診をおすすめします。

  • 何度も血痰が出る
  • 咳・痰が長引く
  • 体重減少・発熱・息苦しさがある
  • 血痰の量が増えていく

Q5. 血痰の色や量で病気の違いはありますか?

ある程度の目安になります。以下が血痰の色と病気の目安になります。

  • ピンク色・泡状:心不全や肺水腫
  • 鮮紅色・新しい血:気管支炎や肺がんの可能性
  • 茶褐色・古い血:過去の出血・感染後

ただし、色だけで判断するのは危険です。正確な診断には画像検査・喀痰検査が必要です。

Q6. 血痰が出ると、肺がんなのでしょうか?

必ずしも肺がんではありません。実際には、気管支炎や感染症が原因であることが多いです。
しかし、中高年・喫煙者・長引く血痰がある場合は、肺がんの可能性も否定できません。

肺がんの
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Q7. 呼吸器内科ではどんな検査をしますか?

一般的に以下のような検査を行います。

  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT(より詳しい肺の画像)
  • 喀痰検査(細菌・抗酸菌・細胞診)
  • 血液検査

必要に応じて気管支鏡検査を行うことがあります。この場合は高次医療機関へご紹介いたします。

Q8. 血痰が出たとき、自宅でできることはありますか?

以下のような点に注意してください。

  • 強く咳き込まないようにする
  • 横にならず、上体を起こして休む
  • 血の量・回数をメモしておく(診察時に役立ちます)
  • 喫煙中止・室内を加湿する

Q9. 検査や診察の費用はどのくらいですか?

保険診療(3割負担)で、初診+胸部レントゲンの場合はおおよそ 1,500〜2,000円前後が目安です。
CT検査や気管支鏡検査が追加されると、費用は 6,000〜7,000円程度 になることがあります。

Q10. 血痰はどのくらいで治りますか?

原因によって異なりますが、風邪・気管支炎などの感染症が原因で一過性のものでは 1〜2週間程度で治まります。しかし、肺がん肺結核肺非結核性抗酸菌症などの病気が背景にある場合は、根本な治療を行わないと長引きます。

Q11. 朝だけ血痰が出る原因はなんでしょうか?

寝ている間に痰はたまりやすく、起床時は痰が最も多く出ます。朝の痰は、咳で異物(たまった痰)を排出しようとする体の正常な働きによるものでもあります。気道で血が出ている場合、最も痰の多い朝に血が混じった痰も出やすい傾向があります。主な原因としては以下のものがあります。

  1. 口や鼻からの出血が夜間に溜まる
    就寝中に歯ぐきの炎症・口内の乾燥・鼻出血が少量続き、朝いちばんの咳やうがいで赤い/茶色い痰として出ることがあります。
  2. 歯周病・口腔内のトラブル
    歯磨き時の出血が夜間に口腔内へ流れ、朝の痰に混ざる。
  3. 後鼻漏(こうびろう)
    鼻~副鼻腔から喉へ垂れた分泌物に細い血筋が混じり、朝に痰として出ることがあります。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で起こりやすいと考えられます。
  4. 肺がんや慢性気管支炎、非結核性抗酸菌症
    起床時に痰が多く、粘膜が刺激されて血痰が混じることがあります。

参考情報:
①日本呼吸器内視鏡学会 気管支学「喀血診療指針」
https://www.jsre.org/modules/medical/index.php?content_id=17
②ERS publication 「Haemoptysis」Page: 191-209
https://publications.ersnet.org/content/book/monograph/978-1-84984-092-7/part/part_3/chapter/chapter_13

院長からのメッセージ

診察痰に血が混じった場合は、必ず医療機関に受診しましょう。特に血の量が多い場合や息苦しさを伴う場合はすぐに受診しましょう。血痰が数週間続く場合や微熱や体重減少などの症状と伴う場合は、肺がんや肺結核のような重篤な疾患が隠れていることもあります。早期に原因となる病気を特定し、治療を開始することが大切です。



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監修 呼吸器専門医・医学博士 表紀仁

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