「急に皮膚に赤いブツブツが出て、かゆくてたまらない」「しばらくすると跡形もなく消える」このような症状で受診される患者さんは非常に多く、その代表的な皮膚疾患がじんましん(蕁麻疹) です。日本人の約2割が一生に一度は経験するとされ、日常診療でも頻繁にみられる病気です。
本記事では、アレルギー専門医の立場から、じんましんの原因や検査、どのように治療するか、そして生活上の注意点をわかりやすく解説します。
じんましんとは?
じんましんは、皮膚に一時的な膨疹(みみず腫れ)と強いかゆみが出現し、数時間以内に消失する疾患です。膨疹は地図状にまばらに出ます。特徴は「跡を残さず消える」点で、通常は24時間以内に痕が消えます。多くはアレルギー反応や物理刺激などをきっかけにして起こります。
主な症状として、
- かゆみを伴う赤い膨らみ(膨疹)
- 数時間以内に消えるが、次々に出現する
- 全身どこにでも出現する
- 重症例では 血管性浮腫(まぶた・唇・喉の腫れ)を伴うことがある
蕁麻疹の原因
じんましんの原因は多岐にわたります。原因が特定できない「特発性」が多く、食べ物・寒冷刺激・感染症などが原因となりえます。
以下が代表的な原因です。
- 食物:エビ・カニ、魚卵、ナッツ類、小麦など
- 薬剤:抗生物質、解熱鎮痛薬(NSAIDs)、造影剤
- 感染症:風邪、マイコプラズマ感染、ピロリ菌感染など
- 物理的刺激:寒冷、温熱、圧迫、運動、日光など
- ストレスや自律神経の乱れ
じんましんの原因特定には、直前に何を食べたか、化粧品やボディソープなどを変えたか、アルコール摂取の有無、運動習慣、服用している薬やサプリメント、生活環境の変化(職場・学校)など様々なことを聴取します。
汗や体の温度が上がるとじんましんが出る「コリン性じんましん」という病気があります。運動、入浴、精神的緊張、辛い食事などで体温が上がり、汗腺が刺激されると出現します。
じんましんの種類
じんましんには大きく分けて「急性」と「慢性」 の2つがあります。
①急性じんましん
発症から6週間未満のもので、食べものや薬などが原因となることが多いです。子供や若年者に多く発症します。
②慢性じんましん
6週間以上、ほぼ毎日のように発疹が出続けるもので、日本人では約0.1〜0.5%の方がこの慢性じんましんと言われています。
じんましんの検査
一般的に行われる検査
- 血液検査:好酸球数、IgE値、甲状腺機能、自己抗体の有無
- アレルギー検査(特異的IgE抗体検査)
- 感染症のスクリーニング(ピロリ菌、ウイルス抗体など)
ただし、慢性じんましんでは検査をしても原因が分からないことが多いのも事実です。
名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック(本院)では上記の検査をすべて行っております。
じんましんの治療
じんましんが出た場合、軽症の場合は抗アレルギー薬で治療します。主な抗アレルギー薬は、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン拮抗薬などです。抗ヒスタミン薬は、アレグラやアレジオンなど市販されている薬剤もあります。
重度の場合や慢性的にじんましんが出て上記の薬でも良くならない場合、ステロイド内服や注射薬(月一回、ゾレア)などが使用されることがあります。
①抗ヒスタミン薬
以下のような薬が代表的です。副作用として眠気や口の乾きなどがあります。
②抗ロイコトリエン薬
抗ヒスタミン薬で効果が不十分な場合に、追加を検討します。
③ステロイド短期投与
重症例のみ使用します。
④オマリズマブ(抗IgE抗体製剤)
上記のような薬を使用しても改善しない場合に使用します。難治性慢性じんましんに有効とされています。
難治性の慢性じんましんに対するゾレア
一般的な抗アレルギー薬の内服やステロイド軟膏を使用してもなかなか改善しない場合、注射薬を使用することがあります。ゾレア(オマリズマブ)という注射薬を使用します。
この注射薬の投与の対象となる患者様は、
- 原因が不明のじんましんがある
- 他の治療(抗ヒスタミン薬など)でもよくならない
- 12歳以上
(条件を満たす場合でも、妊娠中および授乳中の方は要相談)
成人及び12歳以上のお子様にはオマリズマブ1回300mgを4週間毎に皮下に注射します。注射はクリニックで行うほか、自宅にて自己注射を行うことも可能です。ゾレアの副作用はすくないですが、注射部位の腫れ、頭痛、発熱、疲労感などがまれにあります。
費用は17,400円/月(3割負担、診察代含まない)程度です。
日常生活での注意点
- 誘因の回避:冷え、発汗、摩擦などを避ける
- 食事管理:急性の場合は原因食材を避ける
- ストレス対策:規則正しい生活、睡眠
- 市販薬の使い方:抗ヒスタミン薬の自己判断使用は避け、必ず医師に相談
じんましんとアナフィラキシー
じんましんの中で最も注意すべきなのは、アナフィラキシーの初期症状として現れるケースです。アナフィラキシーは、アレルギー反応の中でも最も重症な状態で、すぐに病院を受診する必要があります。
アナフィラキシーを疑う症状は以下の通りです。
- 喉の腫れ
- 息苦しさ、喘鳴がある
- 血圧が低下し、意識が遠のく
よくある質問(FAQ)
じんましんはうつりますか?
感染症そのものが原因のことはありますが、じんましん自体は人にうつりません。
市販薬で治せますか?
軽症例では市販の抗アレルギー薬で改善することもありますが、繰り返す場合は必ず医療機関を受診してください。
どのくらいで治りますか?
急性じんましんは数日〜数週間で自然に治まることが多いですが、慢性の場合は数年に及ぶこともあります。
サバとじんましん
「サバを食べてじんましんが出たが、いつもは大丈夫だった」という場合、ヒスチジン中毒の可能性があります。サバなどの「青魚」に多く含まれる「ヒスチジン」が、保存状態不良で細菌により分解されヒスタミンに変化し、これを摂取することで蕁麻疹・動悸などが出現します。これは「アレルギー」ではなく「食中毒」の一種ですが、症状は蕁麻疹とほぼ同じです。「サバにあたった」と表現される多くの例はこの機序です。
またサバにはアニサキスと呼ばれる寄生虫がいることがあり、これを摂取してじんましんなどのアレルギー反応を起こす方もいます。アニサキスアレルギーと呼ばれ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどに寄生しているためこれらの魚介類でも起こりえます。
院長からのメッセージ
蕁麻疹でお悩みの方へ
蕁麻疹(じんましん)は、かゆみや赤みを伴う発疹が突然あらわれ、数時間から数日で消えることが多い皮膚疾患です。しかし、繰り返し発症したり、症状が長引いたりすることで、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
当院では、急性蕁麻疹から慢性蕁麻疹まで幅広く対応しており、症状の原因や悪化要因を丁寧に調べたうえで、一人ひとりに合った治療法をご提案しています。抗ヒスタミン薬を中心とした内服治療に加え、生活習慣の見直しやアレルギー検査なども行い、根本的な改善をめざすサポートを大切にしています。
「繰り返すかゆみで夜眠れない」「原因が分からず不安」「薬を飲み続けて大丈夫か心配」……このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
最新の医学知識と豊富な臨床経験をもとに、患者さまに安心して治療を受けていただけるよう努めてまいります。蕁麻疹に関する正しい知識と適切な治療で、快適な生活を取り戻しましょう。
監修 呼吸器専門医・医学博士 表紀仁